閉じ込めてやろうか [ 4/94 ]
「フッフッフ、今日はどうした子猫ちゃん」
「まあ黙ってじっとしててくれ」
自分のコートにしがみつき、ぐりぐりと戯れる小さな姿。
子猫ちゃんの今日のお召し物はストライプのスーツ。
葉巻をくわえた鉤爪男を彷彿とさせるそれは、どうせその男の見立てだろう。
随分と自分の子供には甘いようで。
最初にあの鰐の子供だと聞いたときは驚いたが、その子供が自分のコートにしがみついて来た時は倍は驚いたものだ。
フッフッフッフ!あの時の鰐の顔は傑作だった!
「ドフラのふわふわは今日も絶好調だ」
「絶好調か、そりゃあ良かったな」
「うむ」
羽をつまんだり撫でてみたり。
小さな手は飽きることなくコートをいじり続けている。
七武海の俺にも臆さず、媚びることもなく寄って来る子猫ちゃん。
その存在は俺にとっては良いおもちゃだ。
「さあ子猫ちゃん、今日はどうやってさらってやろうか?」
「きっとまた父上が勝ってしまうだろうよ」
さあどうかな?
この遊びを始めてから既に15戦全敗。
名付けて“鰐から子猫ちゃんを取り上げちまえ作戦”
前に教えてみたら、鰐からも子猫ちゃんからも同時に目を細められた。(親子の絆見せつけてんじゃねーよ)
あの手この手で子猫ちゃんをさらってみるが、その度にあの鰐はサラサラと砂の姿で現れてしまう。
なんて愉快な!なんて刺激的な!飽きることなどありえない程に笑いがこみ上げてくる。
なんて素敵な子猫ちゃん!
俺をこんなにも惹きつける可愛いおもちゃ!
鰐が俺と子猫ちゃんを見付けられなかったら俺の勝ち。
もし勝ってしまったら、いつもの様に飽きてしまうだろうか。
悔しがる鰐に子猫ちゃんを投げて返し、次の遊びを探すだろうか。
「ドフラ、今日は海の方へ行こう」
「海ぃ?見飽きてるだろ?」
「ああ、ここに来るまでずっと船で見ていた」
いつもは砂漠の国で砂に囲まれているとは言え、海なんてもう珍しくも無いだろうに。
それならもっと別の逃げ場所を考えなければ。
おつるさんの所なんか、まだ試したことが無かったか。
盲点をついて、あの鰐に用意された部屋でもいい。
「でもな、ドフラ」
「あん?何だい子猫ちゃん」
「まだお前とは一緒に見ていないだろう?」
サングラス越しに見える小さな姿は、自分の手を引いて歩き出す。
・・・フ、フッフッフッフッフ!!
何度も思ったことだが、やっぱりあの鰐野郎にゃあ勿体無いおもちゃだ!
よしよし、それなら本気を出そうじゃねえか。
こんな愉快なおもちゃ、返してやらねえぜパパさん。
返してほしけりゃせいぜい探せば良い。
俺の手を引く子猫ちゃんは、本物の猫の様ににい、と笑った。
宝石箱に閉じ込めてやろうか「ドフラのふわふわは素敵だ」
「それならずーっと触ってれば良い」
「それがな」
「あん?」
「最近、父上のコートも素敵なふわふわなんだ」
「!!」
「黒くてつやつやで、でもふわふわしている」
「(あいつ対抗してきたか!)」
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