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「付き合え」
「え、あ、はあ」
あまりに簡潔なお誘いの言葉に、ぐいっと手渡される紙。
見れば少し離れた島にある有名な甘味処の招待券で、会員様特典と書いているあたり、おそらく彼の行きつけのお店なのだろう。(失礼だが可愛いとか思ってしまった)
甘味かあ、クリームぜんざいあるかな。みつまめでも良いなあ。
「「何してやがる鷹の目」」
「…チッ…」
メニューを頭の中で眺めていたら、だんっと番台に置かれる腕が2本。
それぞれ黒とピンクのコートの腕は、まあ誰の物なんて説明しなくてもいいだろう。
「フフフフ、なら俺はシャボンディパークにでもお誘いするかね」
「チアキ、アラバスタに連れて行ってやる。来い」
「あの、嬉しいんですけどそれはいつ…」
「「明日」」
「ええええええ」
なんで3人揃って明日にかぶせるんですか。わざとか。
3カ所とも行ってみたいのに、選べと。俺に選べと。
甘味処はまた機会があれば行けるかな?と思ったら、おごってやるからいくらでも食え、と魅力的すぎる声がかかった。そんな、何と言う甘い言葉…。
そうすると今度はシャボンディ諸島にも上手いスイーツが山ほどあると声をかけられ、更に今度はアラバスタには砂漠やカジノや独自の文化の料理があるとの声が。
「甘味処」
「シャボンディパーク」
「アラバスタ」
「…と、言いますか、七武海のお勤めは大丈夫なんですか?」
「「「問題無い」」」
番台の前で睨みあう御三方に声をかければ、まあ仲良く返事が返って来た。
おかしいですね、センゴクさんがいつも“海のクズ共”はいくら言っても招集に応じない、と怒ってたんですけど。
「チアキ、俺が最初に言い出したぞ」
「ああん?そんなルール守るようなガキじゃねえだろうが俺らはよう」
「そもそもお前の棺桶船なんかにチアキを乗せるんじゃねえ」
いや…あの…。
ご近所の常連さんたちが入って来れずに涙目で帰って行くんですけど…。
いつもは早朝に来て、夜に来るときは深夜な彼らは、ほぼ他のお客さんと顔を会わせることはない。
だが今は夕方なわけで、そう言っている間にもお隣のおじいちゃんが無言で引き返して行った。
待って待って。気持ちはすごく分かるけど諦めないで入って来て!
(たぶん)害は無いからこの人たち。
「甘味処」
「シャボンディパーク」
「アラバスタ」
「はいはい、良いですか」
「「「!!」」」
火花を散らす勢いの御三方に、勇気を振り絞って挙手する。(やっぱりこわあああ)
このままでは激しくらちが明かない。
俺の勘では、今止めないとこの口論はいずれ戦闘に発展する。銭湯だけに。…今のはちょっと反省した。
「皆さんは明日はヒマなんですね?」
「「「…ああ」」」
何だろうか今の間は。
本当に大丈夫なのか怪しいところだけれど、それなら少しばかりワガママを言ってみても良いだろうか。
「チアキちゃんはどこに行きたいんだ?俺はチアキちゃんとならどこ」
「なんだ、行きてえ場所があるなら言え」
「てめえ人の話遮るんじゃねえぞ鰐」
「言え、チアキ」
いちいち簡潔なミホークさんのお言葉に甘えるとしよう。
少し前から気になっていた場所、それは。
「うっかり温泉」
「「「は?」」」
「随分と流行ってるそうなんですよね、そこ」
よければ、4人で。
むこうの湯に浸かった後は、並んで牛乳飲みましょうよ。
だって番頭の俺は、皆さんと入ったことありませんし。
いつか誘ってみたかったけれど、案外はやく機会が訪れてくれて良かった。
「連れて行ってくれますか?」
笑って目の前の御三方に問えば、子供のようにこくこくと何度も頷かれた。
その無言の返事に安心し、一言。
「皆さん今日は牛乳抜きです」
「「「え」」」
入湯400円牛乳150円・喧嘩揉め事おことわり
「おい、チアキは俺の船に乗せるからな」
「ああん?鰐くせえ船にチアキちゃんを乗せられるかよ」
「俺の船に」
「「お前のは問題外だろうが」」
「また喧嘩ですか?」
「「「こいつらが悪い」」」
「夕方に戻って来れるかな…」
あとがき
三武海の彼らは書きやすいことが判明。
前回の「入湯400円」の続編を!(なれそめ+デート)との嬉しいリクをいただいたので、調子に乗って書かせていただきました。楽しかったです!
もっとイチャイチャさせるつもりが、なんだか3武海で揉めているだけのような気が…←
ただ、某番長さんが番頭を努めるうっかり湯は空島編終了後なので、本当はクロコダイルさんがいるわけないんですよね!(なんてこった!)
どうぞそこは目をつむってやって下さいませ…。
砂月様、この度はありがとうございましたー!
管理人:銘
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