あなたの注文 [ 15/94 ]
※残念なドレークさんです。
「こんにちはチアキ」
「はいこんにちはドレークさん。
とりあえず回れ右して帰る気は・・・無いんですね」
うげえやっぱり今日も来たな。
私が働く小さな喫茶店に最近毎日のように現れるこの男前。
この男と出会う前は『男前は正義』とか思っていたけど、今はそんな妄想は恐竜に食べられて消化されてしまった。
私の言葉が終わる前にカウンター席に座りやがった、あ、座って下さったドレークさんは、男前スマイルを浮かべてにこにこ。
「チアキ、いつものを頼めるか」
「申し訳ございません当店に“いつもの”という商品はございませんので。
メニュー暗記してからおととい来やがってくださいませ」
「すまん言い直そう。
チアキが豆を挽いて淹れてチアキが俺好みに砂糖とミルクを入れてチアキがふーふーしてくれたコーヒーを」
「すいません一回もした覚えがねえよ」
「照れ屋さんめ」
うぜえ!あ、うざったらしいでございます!
・・・なんかおかしいか。
もう良いや。胸中でまで敬語なんて使う必要無い。特にこの変態には。
しかしなんなんだこの男は。
余裕な表情で何を言うのか。
数日前に初めてこの店を訪れ、今日のようにカウンター席に座ったドレークさんに、すごい男前様が降臨した!とテンションを上げた過去の私を殴りたい。
その頃はまだ『男前は正義』だったものだから、サービスのつもりでもう一杯いかがですか?と営業スマイル(必死)で声をかけると、すっと視線を上げたドレークさんとばっちり目が合った。
「君が欲しい場合はどう注文すれば良いだろう」
「・・・はい?」
「もしくは君の貞操を注文したい場合はいくら払えば」
ばっしゃーん!
手に持っていた当店自慢のコーヒーをマスクと帽子で隠れた顔面に浴びせて、やばいこの人!と一歩引いたが、特にダメージも無さそうに「俺の愛はこんなぬるくはないぞ!」と嬉しそうだったので、鉄のトレイで全力で殴っておいた。
結果としてトレイは曲がり、私の正当防衛に驚いたマスターがチアキちゃん!?と叫んだせいで、この変態にしっかりと私の名前がインプットされてしまった。
「どうしたチアキ、物思いにふける姿も良いがぜひとも俺の膝の上に」
「テガスベッタ!」
「うっかりなチアキも俺はしっかり萌えるぞ」
あの時のようにトレイで全力で殴ったが、やっぱりトレイが曲がっただけだった。
なんで帽子すら動かないんだ。おかしいだろう。
昨日知ったが、なんとこの変態、まさかの超高額な賞金をかけられた海賊なんだとか。(億単位とか何それ!)
「海賊の赤旗さん、海軍に通報されたくなかったらこの手をどけてください」
「ああ!チアキが俺のことをまた1つ知ってくれたのか・・・!」
「ポジティブか!触んなやめろ犯罪者!」
「上目づかいで罵るなんて高等技術、どこで覚えてきたんだ」
悪い子だ、と頬にキスされて、全身が鳥肌でえらいことになる。
やばい死因が鳥肌とかあるんだろうか。もしくは変態ショック。
おいこらマスター助けろよ!
こっそり覗きながら震えてんの知ってんですよこの野郎。
「んーちゅっちゅ」
「キャラ崩壊させないでください死んでください」
「チアキ、おねだりする時はご主人様だろう?」
「ご主人様死ね」
「ダメだ萌える・・・!敬語がどんどん崩れるのがまた良い!!」
「ご主人様お願いですからあの世へ船出してくださいませんかこの変態が」
「すいませーん、うちの船長こちらに・・・あー・・・」
「ほらお迎えですよ。逝け」
遠慮がちに店の扉を開いた数名の男たちにドレークさんを引き渡し、ついでに曲がったトレイを投げ付けておいた。
くそっ、やっぱり帽子すら落ちない。どうなってるんだあの帽子は。
「チアキの温もりが残ったトレイ・・・!」
「マスター、包丁」
早く帰りますよ!と急かす男たちに背を押されながら、トレイに何度もキスする男にとどめを刺そうとマスターに声をかけたが、震えるばかりで役に立ちゃしない。
扉が閉まる寸前に飛ばされた投げキッスを全力でよけて、今日こそ海軍に戦艦率いてどうにかしてもらおうと電伝虫に手を伸ばした。
あなたの注文は受け付けておりません
「ちょ、繋がらないんですけど」
「この町の支部は墜としておいたからな」
「え、物騒・・・ぎゃああいるううう」
「これで思う存分愛を育めるだろう?」
「そのアゴもっと割りますよこの野郎」
「船長また逃げたぞー!!」
あとがき
すいません非常に楽しかったです。(^p^)
新星で変態といえばローさん。
でもちょっとそれに逆らってみたいね、と考えた結果がこれですよ。
ごめんなさいドレークさん。あなたが変態だと考えると楽しくて楽しくて!!(こら)
管理人:銘
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