甘いメロディー [ 14/94 ]

「アプー船長やってやってー!」

「アッパッパー、いくぜー!」

体中で音楽を奏でれば、きゃいきゃいと喜ぶチアキ。
音を大きくすれば、チアキの笑顔も比例するかのように明るく可愛らしくなる。
小さな体で一生懸命リズムをとっているチアキはそりゃもう可愛い。
可愛い可愛いチアキ!
今日もオラッチのミュージックで笑ってくれ!

「おーいチアキ、手紙来てんぞー」

「お手紙!?だれだれー?」

それなのに、クルーに声をかけられた途端に興味はあっという間にそちらへ。
てめえこんにゃろー邪魔すんな!!
手紙だか何だか知らないが、そんな紙に書かれた文章なんかよりもオラッチの音楽の方が気持ちが伝わるに決まってる。
だから早くこっちを向いてくれよ!
そんな紙の束なんて見ててもつまらないだろ!?

「おわ、ドレークさんからだ」

「赤旗!?」

ほら、とぴらりと手紙を見せられると、薄いピンクの便箋にびっしりと文字が詰められていた。目がいてえ!!

「拝啓オンエア海賊団の小さな姫君。
つい先日シャボンディ諸島で君のことを初めて見かけた。
あまりの可愛らしさについつい声をかけてしまったが、俺のことを覚えてくれているだろうか。
例え君が忘れてしまっていても、俺は君のことを想う日が続く。
一期一会と人は言うが、俺たちは絶対にそんな言葉に縛られるようなものでは無いはずだ。
あの時君に捧げた飴のようにとけてしまうこともなく、今こうやって愛を紡ぐ手紙のように風化することもありえない。
ああ、君に会いたい。またあの可愛らしい笑顔を・・・」

「だああああああ捨てろおおおおお!!!」

「あー、あの時のドレークさんが赤旗さんかー」

プアーン!と音をかき鳴らしてクソ甘い手紙を奪おうとしたが、チアキはさっと避けて手紙を音読するのをやめない。
って言うか何してんだ赤旗!!
小さな姫君?
声をかけてしまった?
君に会いたい?
なんて甘ったるいムカつく手紙。胸やけがすげえ。気持ち悪い。
チアキも普通に音読するなそんなもん!
さっさと破ってオラッチと遊ぼう!

「散歩してたら声かけられて、飴もらったよ」

「へ、変なことされてねえだろうな!?」

「されないよ。でもハアハアしてた」

「捨てろおおおおお!!」

あぶねええええ!
あいつ元海軍じゃなかったのか。
もしやそんな性癖だから海軍を追われたのか。
そりゃそうだ、海軍もこんな残念な男を野放しにしていられないだろう。
たしかにチアキは可愛いが、チアキはオラッチのオンエア海賊団の立派なクルーだ!
つまりはオラッチのなんだよ!
そのオラッチのチアキに手を出そうなんて!

「・・・君がオンエア海賊団のクルーだと知った時は驚くと同時に悲しく思ったものだ。
花のように可愛らしい君が海賊とは、俺が言うのも何だが世も末なのだろう。
だからこそ、ぜひ君をこちらに勧誘したい。
俺の元へ来れば何も怖いことなど無い。俺が小さな君を護って見せる」

「あんにゃろー次会ったらぶっ殺す」

「あと15枚ぐらい続くけど、このまま読んでも良い?」

「す て ろ !!」

えー!?と顔をしかめるチアキから今度こそ手紙を奪い取り、びりびりに破って海に放ってやった。
顔の前を通った紙片に、『君に似合う可愛い服をたくさん買って』と見えた気がした。いや、見えた。絶対にそう書いてあった。
海に落ちて行く紙片たちに“爆”をくらわせば、真っ黒になって海に溶けて行った。

「面白い人だねえ、ドレークさん」

「オラッチの方が面白いし格好良いし強い!」

だからあんな変態の手紙読まずにオラッチのミュージックを聞けよー!
文字なんかより音楽だ!
それにオラッチの方がぜーったいチアキのこと好きだ。
赤旗の変態なんかより、ぜーったい大事にするしぜーったい護ってみせる。
腕の関節がオラッチたちより少ないような男に負けるかってんだ。

「でも懸賞額ドレークさんの方が上だね」

「そこはあれだよ、変態だから上乗せされてんだよ」

「なるほどー」

小さなチアキを抱き上げて、だから会っちゃ駄目だぞ!と言い聞かせると、不思議そうに顔を傾げていたが無理やり納得させた。
むしゃくしゃして指をくわえて吹いてみたが、どうにも調子が乗らない。
自分にしか分からない程度だが、音が上手く響かないと言うか。
無理やり明るいテンポで演奏しても、気分は変わらず上がらない。
くそうあの変態め!恐竜みたいに絶滅しちまえ!

「アプー船長うるさい」

「なっ!?この曲好きだって・・・!」

「うん、でも今はなんかいつもと違うんだもん」

聞いてても楽しくないよ。
そう言って頬をふくらますチアキに、眼をぱちぱちと何度か瞬いた。
他のクルーたちは今日も調子良いなあなんてこっちを見ているのに、それなのに聞き分けられてしまったのか。

「いつもならもっといっぱい嬉しくなるもん。
楽しいし、面白いし、嫌なことも忘れちゃうんだもん」

自分たちと違って短い腕を伸ばされたと思ったら、ヘッドホンに引っ掛かっていたらしい手紙の欠片を取ってくれた。
それをふっと吹き飛ばして、いつもみたいに可愛く笑うチアキに、体中が今までに無い程に歓喜の音を響かせた。


君に届けと奏で続けた甘いメロディー


「チアキ!会いたかった!」
「こっち来んな変態マスク!」
「ドレークさんお手紙ありがとう」
「てめえのとこなんて行かせるか!」
「俺はバイオリンができる」
「えっ(うずうず)」
「い、行かせねえからな!?」



あとがき

なんて残念なドレークさん。
しかしそれにしても管理人はアプーさん大好きです。
それなのに口調も何もかも良く分からなくて捏造気味。
ドレークさんがバイオリンとかチェロなんか弾けたら素敵!やっぱり捏造!
管理人:銘


[*prev] [next#]
top
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -