知りやがれ [ 11/94 ]

「見たまえよローくん。私モテ期到来だぜ」

「チアキ、お前は何キャラだ。そしてそれ俺のだろうが」

今日も今日とて、朝から私の靴箱はプレゼントでいっぱい!
手紙は当たり前で、私の靴を踏みつぶさんばかりのプレゼントがどさどさーっと私の足を直撃してくれた。靴をしまおうとしていたので完全直撃。
みんなの心が痛い!!
私宛てじゃないのに痛い!!

って言うかさあ。

「ローの靴箱に入れろやあああああ!!」

「悪いな、俺のは鍵付きだ」

最近物騒だからな。じゃねえよ!
最近物騒なのはあんたとキッドが変な冷戦続けてるからだよ!
授業中に地味に喧嘩して間の席の子泣かせたの忘れたか。

「さて、面白いもんは無いな。おいペンギン」

はいよ、とペンギン君はプレゼントたちを受け取り、ため息一つでゴミ箱へ。
さようなら乙女の心たち。
そしてさようなら私の疑似モテ期。
まったく可哀相な子たちだ。
こんなことするバカたれのどこが良いって言うんだ。
お姉さんが聞いてやるから茶菓子持って名乗り出ろ。

ペンギン君と二人でいっぱいになってしまったゴミ箱と言う名の墓場に手を合わせ、なむなむー!と拝んでおいた。
乙女たちの根性よ、安らかに眠れ!
間違っても私のところに化けて出ないでね。

「私も鍵付けちゃおうかな。女の子たちには悪いけど」

ローのバカたれの幼馴染のせいで、よくいっしょにいるもんだから、女の子たちは私の靴箱をロー行きの宅配窓口に勘違いしている。
毎朝毎朝どさどさと流れ落ちるプレゼントたち。
そして律儀にローに届けてやる私。
このままでは私の靴箱はホントに宅配窓口になってしまうじゃないか。

「金払わせたらボロ儲けできそうだよなあ」

「キャスケット君、そのアイデアはひくわー」

「俺なら軽くモルモットにする程度で抑えるぞ」

「もうローはそのままつっぱしってくれよ」

「おお、頑張る」

とりあえず帽子の上から一発殴っておいた。
頑張るじゃねえよこいつは。
しかし鍵の件は本気で考えないとダメそうだなあ。
去年のバレンタインはすごかったし、気のせいか今でも靴箱がチョコくさいよ。
さっさとこの乙女たちの猛攻を締め切ってしまうべきか。

「チアキ」

「ロー、人を呼ぶときは中指立てるんじゃありません」

「うるせえな。さっさと来い」

いちいち勘に触るこの隈男めが。
今度は人差し指で手招き(指招き?)され、そっちに行ってやる優しいチアキちゃんに泣いて感謝すれば良いのに。
・・・うお、想像したらダメだった。
こりゃ放送できないようなショッキングな映像だったわ。

「・・・チアキ、すげえ顔してんぞ」

「ローは今のローでいてね」

「あ?おお、頑張る」

もう一回帽子の上から殴ろうとしたら避けられた。
んだとこの野郎!見切った、じゃねえよ!ニヤニヤすんな!

「鍵なんて付けたら落とす」

「ちょ、どこから」

「肉体的にも精神的にも死ぬようなところ」

良く分かんないけど、椅子とかから蹴り落とすとかじゃなさそうだ。
なんなんだ。私が靴箱に鍵を付けることはそんなに重罪か。
まずこれは罪なのか。
お前も付けてるなら同罪じゃねえかバカたれ!

「私にどうしっろてんだよこの野郎、あ、このやロー!」

「お前はこうやって毎日俺にあれを届けてりゃ良い」

「ごめんなさいボケにスルーは勘弁してください」

あれ、と指さすのはさっきのゴミ箱。
ゴミ出しの係りの人ホントすまん。

「そうすりゃ毎日実感できるだろ?」

「ああん?何が」

「お前の幼馴染がいかに好い男かってことだよ」

はいご馳走さまです。マジごっつぁんです。
自慢話でお腹いっぱいなチアキちゃんはさっさと教室に戻ろうじゃないか。
いつかあのニヤニヤ笑う顔に虎模様書いてやりたい。
残念ながら私は毎日頑張る乙女たちとは違うんだ。
あんたが変態ってことも、実は可愛いものやファンシーなものが好きなことも、その帽子はスペアが3つあることも知ってる。
あんたは昔っからバカたれのままだよ。

私をおとしたきゃ、靴箱にバラでも詰めてみやがれ!!

冗談のつもりで(あれはマジでなかったわ)吐いたセリフに、次の日の朝に後悔することを私が知るはずないじゃないか。
ちくしょうあのバカたれ!!


愛の大きさを知りやがれ


「おお、今日もご苦労さん」
「ローこの野郎!嫌がらせか!!」
「お前が言ったんじゃねえか」
「乙女たちのプレゼントはどこやった」
「待ち伏せて全員にその場で突き返した」
「(キャプテン素直だか素直じゃないんだか)」


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