新しいおうち [ 9/94 ]

「キャプテン見て見て!」
「どうしたベポ」
「俺、妹ができたよ!!」
「よしきたツナギを用意してやる」

「「「いやいやいやいや!!」」」

待ってキャプテン!
ベポが抱いてるの、どう見ても人間の女の子だから!
見てて可愛い光景だけど、実はなかなかにダメだから!たぶん誘拐だから!!

クルーたちが必死に進言するが、ベポとキャプテンのローは笑いっぱなし。(ベポはにこにこ、ローはにやにや)
物資の補給のために立ち寄った島で、我らがマスコットが持って来たのはまさかの幼女。
いつもは菓子やら何やら買って来て、見て見てーと船中を自慢して歩くのだが(ベポ以外がやったら絶対殺される!)、今回のものにはさすがにいつものように、そうか良かったなーとは行かない。
なんてったって、戦利品が生き物。しかも人間。さらに幼女。

「・・・ベポ、その子はどこから連れて来たんだ?」

クルー一同の想いを背負い、ペンギンが子供の頭を撫でながら聞けば、ベポはにこにこ笑ったまま言いのけた。

「分かんない!ついて来てたんだ!」
「ん、ついて行った」

おおお、しゃべった!!と当たり前のことに驚いてしまったが、その前にもう一つ。
わ か ん な い とかお前!!
子供も怖がる様子もなくベポにしがみつき、ローやペンギンの手を拒むそぶりも無い。
おそらくはベポのあの容姿に惹かれてついて来てしまったのだろうが、何がどうなって妹になった。

「おいベポ、俺にも抱かせろ」
「アイアイ!優しくね」

キャプテン、あんたが言うと卑猥に聞こえるのはなんでだろう!
そんなことを口にできるわけもなく、子供はベポからローの腕へ。
若干ローの息が荒い気がするのは気のせいということにしておく。

「ちっせえな。お前名前は」
「チアキ」

ベポと同様にローにも怖がる様子もなく、黙って頭を撫でさせている。
やっぱりローの息が荒い気がするのは気のせいということにしておく。

「気が付いたら後ろにいて、可愛いから連れて来ちゃった」

「でかしたベポ。今度アザラシ捕まえてやる」

やったあ!ありがとうキャプテン!じゃねえよ!!
お前可愛いからって何でも許されると思うなよ!!
あとキャプテン、あんた海には入れないんだから、そのアザラシ捕まえるのどうせ俺たちでしょうがあああああ!!
て言うかどうやって捕まえんのアザラシって!!

クルーたちの胸中はつっこみの嵐だが、残念ながらこのハートの海賊団にそれを口にできる勇者は数少ない。
その数少ない勇者(ペンギン)も、今はローとベポと一緒になってチアキの頭を撫でている。(帰って来てペンギイイイン!)

「チアキはどうしてベポの妹になったんだ?」

しかしさすがは常識人ペンギン。
聞くべきことは忘れていなかったようで、チアキに視線を合わせて優しく聞いてやる。

「ん、歩いてたらベポがいて」
「うんうん」
「そのままついて行って、そしたらお船について」
「うんうん」
「ベポが」
「ベポが?」

「お友達になってって」
「うん、言ったよー(にこにこ)」
「だから」
「うんうん」

「妹なら良いよって言った」

「うんう、ん?」

え、なんでそうなるの?
友達になってと言われて、まさかの妹なら許可。
・・・え?ホントになんでそうなるの?
クルーたちのみならず、さすがにローにもよく分からなかったらしく、彼も頭上に?を浮かべている。

「チアキ、家はどこだ?」
「おうち?」
「ああ、おうちは分かるか?」

ぶーぶー言う二人(もちろんベポとロー)を無視し、ペンギンは質問をやめない。
このままではハートの海賊団があらぬ疑いをかけられる。
ユースタス・キッドは一般人に被害を出すことで懸賞金が高額になっているが、うちは幼女誘拐で懸賞金額が上がるなんてことになったら、たとえワンピースを手に入れたとしても、二度と故郷の北の海に帰れなくなる。
むしろどこの島にもものすごく立ち寄りにくい。
きっと死の外科医の肩書きがロリコン小児科医に変わってしまう。

「チアキのおうちは」
「うんうん」
「今日からここ」

ね、とベポに向かって首をかしげ、ベポもねー!と返す。
そんな二人にローは大変満足そうにうなずく。

そしてクルーたちの頭の中では、いつか来るであろう未来が見えていた。

トラファルガー・ロー
ついに懸賞金三億越え。
その理由はまさかの一般人の幼女の拉致監禁。

だ め だ ろ う !!!
ちょっと冗談でなくだめだろう!
本気でどこの島にも上陸できなくなる!

キャプテン!ロリコン小児科医はやばいでしょう!!という歯に衣を被せないキャスケットの叫びに、もちろんローは刀を抜いた。
そこまでせんでも、とばかりにばらばらにされた無惨なキャスケットは、お前は良くやったよ、とクルーたちの手で回収された。

「俺、ずーっとチアキを守るんだ!」
「ん、守ってね」
「だって俺、チアキのお兄ちゃんだもんね!」
「おいおい、俺もお兄ちゃんにしてくれよ」

息を荒くしながら(気のせいにできなかった)チアキを抱く腕に力をこめたローに、さすがにペンギンが蹴りを入れた。
それでも構うことなくにこにこ(一名にやにや)笑う三人に、クルーたちは諦めて悟りを開くことにした。


新しいおうちは潜水艦!(ペット可)


「ちょ!今日の新聞!!」
「あ?」
「海軍元帥の孫娘行方不明!!」
「・・・あ?」
「それチアキのじいじ」
「「「「ぎゃああああああ!!」」」」



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