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「どこから入ったって聞いてんだよ」
「あの、あの」
困りました。
とっても困りました・・・!
目の前に立つ男性は、ぎろりとこちらを睨んできます。(ひゃっ!)
「ぼくは」
「まさか!フランキーのとこのガキか!?」
ち が い ま す !!
誰ですかフランキーさんって!
どうしてさっきよりお顔を怖くするんですか!
ああ、もう!
CP9の皆さんもなかなか怖い顔をしていらっしゃいますが(ごめんなさい・・・!)とっても優しい方々です。
けれどこの男性から感じるのは、葉巻の匂いとはっきりとした敵意。
こんなにもはっきりと敵意を向けられるのは初めてで、上手く体が動いてくれません。
どうしましょう。
怖い、です。
目がこちらに訴えるんです。
怪しい、疑わしい、誰だお前は、と。
気付けば喉はカラカラで、ぐ、と喉がなりました。
「ぼくは、ル・・・」
ルッチさんとカクさんに、お昼を届けに。
言いかけて、ふと気付きました。
ぼくは・・・“この島に来たばかりの子供”はお二人のことを知っているのか?と。
それにお二人はぼくが来ていることを知っているのでしょうか。
どうしましょう。自分の立ち位置が分かりません。
もし不用意に言葉を発したりして
任務が、失敗したり、したら。
ぶわっ
考えた途端、体中から嫌な汗が吹き出します。
ああ、ああ。
もしそんなことになってしまったら、自分は。
あの優しい人たちの努力を踏みにじり、世界政府の計画をぶち壊すことになる。
きっと、あの人たちの傍にいられなくなる。
怖い、嫌だ、そんなのは嫌だ。
体は震えだし、視界はにじみ。
おかしいです、ぼくはこんなに弱かったでしょうか。
こんなに弱気な自分は初めてで。
頭に浮かぶ方々の名前を大声で叫んでしまいたいのをこらえて、一歩後ろへ下がれば。
「っ待て、逃げる気かよ!!」
「違・・・!」
ひゃあああ!?
何ですか、何ですかこれ!
男性の袖から(えええ!?)伸びてきたロープは、ぼくの右手首にしっかりと巻き付いています。
びん、とロープが引かましたが、なんとか踏みとどまることができました。
しかし、この人!え、ええええええ!!
「その風呂敷の中身で船に何するつもりだった!!」
何もしません!
そもそも中身はお弁当です!!
「こんなガキ一人で出向いて来るたあ、えらくなめられたもんだぜ」
「痛い!痛いです!」
腕を引けば、より強くロープがしまってしまいました。
血が!血が止まりますから!
もう何なんですか、この方。
おそらくはこのガレーラカンパニーの社員の方でしょうが、何か勘違いしていらっしゃるようで。
会社と船が心配なのはお察ししますが、それにしてもあんまりです!
ルッチさん、カクさん・・・!
「聞いてんのかガキ!!」
「っ・・・!」
ああ、スパンダムさんジャブラさんフクロウさんクマドリさんカリファさんブルーノさんカクさんルッチさん給仕の皆さんクザンさん
お父さん、お母さん
「たすけ、て!」
ざんっ
初めて、初めて助けてなんて言葉を使いました。
そう思った瞬間、腕を引く力が弱まり、ぐらりと傾く体と視界。
え、あ、転ぶ。
「パウリー!おぬしこんな子供を相手に何をしておる!!」
支えられた体と、頭上から聞こえる懐かしい声。
見上げると目が合い、ハルア、と口だけが動きました。
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