14-1 [ 28/101 ]
塔の中が随分と静かになって、既に一年近くが経過していた。
この島から出て行った四人は、線路で繋がった別の島にいた。
水の都、ウォーターセブン。
ハルアはその島を見たことも無かったし、当然訪れたことも無かった。
話では大きな造船会社があるらしく、とても栄えた賑やかで明るい島だそうだ。
何より、その島には夜が存在する。
おそらくはこれが一番大きな違いだろう。
エニエスロビーにいると存在すら忘れてしまうが、時間が来れば太陽が去り、ちゃんと月と星が現れる。
それを考えるだけで、ハルアの頭の中はむくむくと興味でいっぱいになっていく。
造船会社、水の都、水水肉、水水飴、町中にはしる水路、ブルという生き物。
ハルアの見たことが無いものが、その島には山ほどあるのだ。
「化け猫とカクがいねえと、やっぱり快適だなあ!ぎゃはははは!」
「静かにはなったが、噂の種が減ってつまらないチャパパー」
「よよい!あいつらは、あ!う〜まあーく〜(割愛)」
「うるせえぞお前ら!なんでここに集まってんだ!!」
なんでってそりゃあ。
「「「ハルアの茶を飲みに」」」
「出てけえええええええ!!」
前言撤回で、あまり静かではなかった。
先発隊の二人が出て1年、後発隊の二人が出て11ヶ月が経ったが、相変わらずこの島は賑やかなようである。
「今日はあったかいのでアイスコーヒーにしてみたんです」
「お前もこいつらの分なんて淹れるな!」
今日もこの島は平和なのです。
CP9の皆さんは数が半分になってしまいましたが、寂しいなんて言ってはいられません。
任務に出てしまった皆さんのお部屋のお掃除と管理も欠かせませんし、いつものお食事の準備やお洗濯は変わらないのです。
ルッチさんたちは、今はウォーターセブンという島にいるらしく、詳しくは教えてもらえませんが(当然です!)何かを探しているんだそうで。
むむむ、行ってみたいなんて思ったりしませんよ!
皆さんはお仕事をしに行ったんです。観光じゃないんです。
・・・でも、ブルさんってどんな生き物なんでしょう?
船っていったいどうやって作るんでしょう?
水路?水上屋台?海列車?闘う船大工??
どうやらウォーターセブンは不思議がいっぱいなようです。
皆さんは探し物なんて苦労するでしょうね。
・・・考えていても仕方ありません。はやく給仕室に戻りましょう。
「ポッポー!」
「あ!ハットリさんお疲れ様です!」
わあ!この前のお返事を渡したのは一昨日なのに!
えへへへ、ハットリさん凄いんですよ。
なんとこのエニエスロビーとウォーターセブンを往復しているのです!
『造船会社の入社試験に合格して船大工になった。
この町は水路が走っていて、ブルという生き物がたくさんいる。
ハルアに見せたくて堪らない。
もう少し待っていてくれ。すぐに帰る。』
そんな短い手紙を持ってハットリさんが帰って来たのは、ルッチさんがこの島を出た三日後のことでした。
あの時はびっくりしましたねえ。
だって、任務中ですよ?
良いんですかね?
(どうやら良くないことらしく、手紙のことはスパンダムさんや他の人には言っちゃダメだそうです)
補足すると、このエニエスロビーへの荷物や郵便物は、世界政府の重役からのもの以外は厳重にチェックされることになっている。
それはCP9宛てのものであっても例外では無く、給仕宛てのものなら尚更。
なので通常よりは手元に届くまでに随分と時間がかかるうえ、容赦なく開封されて中身を見られることになる。
この島から出した場合も同じであり、開封してチェックされた後、念のためいくつもの島を経由させられるため、更に時間がかかってしまう。
ルッチのように密使を使えばその問題は回避できるが、あまり褒められたことではなかったりする。
いや、ぶっちゃけ結構な問題だったりする。
ルッチさんはこの一年足らずでで数十通もお手紙をくださいました。
その度に返事を書いていますが、そうするとまたハットリさんがやって来て、新しいお手紙を届けてくれます。
どれも短いものですが、一度は水水飴というお菓子を添えてくれたこともありました。
水飴とはまた違う不思議な食感はとっても美味しかったです・・・。
お返事にそう書いたら、次のお手紙に数十個の飴が添えられていてハットリさんが大変なことになっていたので、それ以来手紙にものを添えるのは程々に、ということに落ち着きました。
今日のお手紙には可愛らしいパンジーが添えられていました。
他の給仕さんにこっそり聞いてみたら、“わたしを想って”という花言葉があるそうで!!
ルッチさん!そんな光栄な!
ああ、こんな可愛らしいメッセージをいただいたらぼくもお返しをしなければ。
塔にある図書館で図鑑を調べて・・・ああ、これにしましょう。
[*prev] [next#]