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あららら、随分と馴染んじゃって。
しばらく見ることの無かった小さな姿は、予想以上にこの島に受け入れられているようで。
嬉しいような、寂しいような。
ぶっちゃけると、彼としては自分に泣きついて来てくれることを望んでいた。
あの子の性格から考えて、100%ありえないとは分かっていたが。
でもさ、俺が見付けたんだもん。
あの子の足長おじさんは間違い無く俺だし、相当懐かれている自身だってある。
俺が一声かければ、スパンダムちゃんだって抗えないだろう。
まあそんなことはできればしたくないのだが。
俺が願うのはあの子の幸せだし、笑っていてくれれば俺も幸せだ。
でもなあ、これはなあ。
ちょっと限度を超えてるんじゃなかろうか。
「ひゃあああああー!!」
「ルッチいい加減にせんかー!」
「化け猫ハルアに近付くな触んな匂い嗅ぐな頬ずりすんな!って言うか止まれ!!」
「やかましい奴らめ」
「ひゃあああああー!!」
どういう追いかけっこよ、これ。
どうしちゃったのCP9。
特にロブ・ルッチ。
いつも静かなあの男が、ああも気色悪くなれるとは。
それを追いかける二人も随分とイメージが崩れてしまっている。
「はいはい追いかけっこは終わりね。はいハルアちゃんよこして」
「「「「!!!」」」」
すっと前に立ちはだかって、これまたすっとハルアを取り上げる。
相変わらず軽いなあ。ちゃんとお腹一杯食べてるのかな。
「クザンさん!!お久しぶりです!」
「はい久しぶり。元気だった?」
向けてくれる笑顔は変わりなく可愛い。
むしろ、しばらく見ていなかったから割増しに可愛い。
何度か電伝虫でやり取りはしたけど、やっぱり顔を会わせるのが一番だよね。
「・・・大将青雉が、わざわざご苦労様です」
ハルアを取り上げられた両手を、忌々しげに握るこの男。
本当どうしちゃったの。そういう趣味に目覚めたの?
嫌味のつもりか知らないが、残念ながら嫌味なんて言われ慣れている。
冗談じゃなく残念である。
ちなみに、本部では最近大人しいと思ったらまた消えたよあの大将は!と部下たちが騒いでいたりするが、それを分かったうえでここに来ているあたり、この男も大概どうしちゃったの、である。
あいつがいないのはいつものことじゃん、と諦めている他の大将二人と元帥も、やっぱりどうしちゃったの、である。
「今日はお仕事か何かですか?」
「いやー?ハルアちゃんに会いに来ちゃった。」
お仕事はまあ置いといてさ。(置いとくな帰って来い! By部下たち)
ぐしゃぐしゃと頭を撫でれば、以前よりも髪が柔らかくなっている気がするが、林檎と太陽の匂いは変わっていない。良かった。
しかし変わっていると言えば。
「・・・ねえ、俺のあげたエプロンは?」
「え?」
この島に連れて来る前、プレゼントに買い与えた白いエプロン。
ポケットが二つあり、動物の肉球のマークが胸に刺繍されたシンプルなものだったが、この子も喜んでくれていたのに。
今は前のものと形はほぼ同じだが、色が真反対の真っ黒なものだ。
いや髪と同じ色だから似合ってるけど。
俺のは?え、捨てたとかないよね。まさか。
「自分が汚してしまったので、新しいものを送りました」
お ま え か
あららら成程、黒はこの子の髪の色であると同時に、ロブのイメージカラーだったか。
何か問題でも?とばかりにこちらを見てくる男にイラっとした。
問題だよ。お前の色のエプロンとか。
汚してしまった、とはハルアとルッチが初めて会った時、返り血を浴びまくったスーツで抱きついた一件によるものであり、その後何度洗っても白い生地から赤い跡が消えることはなく、ひーひー嘆くハルアにルッチが嬉々として新しいものを買い与えていたりする。
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