08-1 [ 16/101 ]

任務が終わり、久々にエニエスロビーに帰って来た。
いつでも太陽に照らされたこの島は、いつ帰って来ても同じ顔をしている。
「(まるで時が止まっているようじゃ)」

最初は気味が悪かったが、今ではもう慣れてしまった。
寝るときはカーテンを引いて太陽を拒絶し、起きれば開いて太陽を迎え入れる。
位置は移動するものの、太陽はいつでも空に君臨している。
たまには月や星と変わってやれ、きっと拗ねておるぞ。

しかし随分とまた、

「メルヘンな・・・」
「カク?どうした」
「いや、何でもないわい・・・」

いつの間にやら思考が口に出ていたらしい。
共に帰って来た仲間に聞かれたことが恥ずかしい。
感傷に浸っている暇は無い。まずは長官に帰還報告をしに行かなければならない。
ならない、のだが。

「ひゃあああああー!ジャジャ、ジャブラ様!ルッチ様落ち着いて・・・!」

「ハルアの言葉が聞こえなかったか野良犬。さっさと落ち着け。そして消えろ」

「てめえこそ聞こえなかったのか化け猫!俺はいつでも冷静だ狼牙!あとお前が消えろ」

「・・・はっ・・・」

「てめええええこの化け猫おおおおおおお」

どうやら島はいつも通りでも、塔の中はそうはいかなかったようだ。
CP9のNo.1と2が言い合いをしているのは分かるが、ジャブラに抱えられた子供は見覚えがない。

どうやらルッチもその子供を狙っているらしく、言い合いながらもじりじりと距離を詰めて腕を子供に伸ばしている。
ジャブラがその腕から逃げ回るものだから、抱えられた子供も当然一緒に振り回される。
どんどん顔色が悪くなっていき、今では真っ青になりながら二人の名前を呼んでいる。

「あれは・・・どうすべきかの・・・」

「ああ・・・」

隣のブルーノに問うても、やはり彼も動揺しているようではっきりとした答えは返ってこない。
しかしどうしたものか。
こうしている間にも喧嘩は激化し、今では六式まで使い出している。
そうするとますます子供は大変なことになっているようで、声すら聞こえなくなってしまった。

え、あれ死んどらんか?

手を出していいやら、子供が生きているのかどうかも怪しいこの状況でワシ等にどうしろと。
その瞬間、風が自分たちを横切って被っていた真っ黒のキャップを攫っていった。

「二人ともいい加減にしろー?
ハルアがえらいことになってるチャパパー」

久しぶりに見る巨体のフクロウが、子供を抱いて立っていた。
さすが音無し。あの二人から奪い取るか。
しかし彼の言う通り、ハルアと呼ばれた子供は真っ青な顔で既に気を失っているようだ。

「あれ程カリファと給仕長に言われたのに、まだ反省してないのかー?」

「ぐ!お、俺はハルアと話してただけだ狼牙!
そこに化け猫が・・・!」

「黙れ野良犬。ハルアに触るな、話しかけるな、視界に入るな」

どうしたんじゃこいつらは。
はっきり言って気色が悪い。はっきり言わなくても気色が悪い。
CP9が子供の取り合いとは。
あの二人の方がよっぽど子供のようだ。

「とにかく、二人がまたハルアに迷惑をかけたら連れて来るようにカリファに言われてるチャパパー。大人しく着いてくるチャパパー」

あ、それとー、とフクロウがこちらを向く。

「カクとブルーノー。ちょっとハルアを頼むぞー」

気を失ってるだけだチャパパー、とこちらに差し出すものだから、思わずこちらも腕を伸ばしてしまった。
受け取った体は思った以上に軽く、黒い短髪がさらりと流れた。
子供らしい顔は、今は少し歪んでいるが可愛らしい。
いやちょっと待て。
そうじゃないだろう。

「フクロウ!ワシらは長官の所に・・・!」

「帰還報告ならどちらか一人で済むチャパパー。
とにかく頼んだぞー」

いやそりゃそうだが。
未だに睨みあう二人をフクロウは引きずっていく。
ハルアを抱いたワシを見て、二人は仲良く口を開いた。

「「何かしたら、ぶっ殺す」」

おお怖い怖い!
そうおどけて腕に力を入れれば、てめー!だの覚えてろ、だの物騒な言葉が飛んでくる。
本当に子供のようじゃな、あの二人。



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