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なぜ、なぜこの子がここに。
遠く離れた島で沈まない太陽に照らされているはずのハルアが、なぜここにいる?

「カク!そいつフランキーのとこの差し金だ!!」
「はあ!?」

何を言っとるんじゃこいつは。
ワシの可愛い可愛い弟分を捕まえて、フランキーときたか。
あんな変態と一括りにされてたまるか!

「ぼく、ぼく・・・」

揺れる声に、腕で支えたハルアを見下ろして心臓が跳ねた。
ハルアが、泣いている。
おっさん二人に六式で振り回されてもルッチに追い回されても涙を見せなかった、この子が。
大きな瞳はいっぱいに涙を溜め、ぼろ、と一粒こぼれて自分の腕に落ちた。

風呂敷を抱きしめ、震えて泣くこの子のなんと小さなことか。
・・・風呂敷?

よく見れば、ハルアの持つ風呂敷には見覚えがある。
そうじゃ、ブルーノが何度か使っておった。
つまり、それは。

「坊主、“見知らぬ顔”じゃがどうした?」
「っ!」

落ち着け、と震える背中を撫でてやる。また一粒涙が落ちた。

「その風呂敷はブルーノのものじゃな?」
「・・・あ、はい!」

きっかけさえ作ってやれば、かしこいこの子は理解してくれる。

「ぼ、ぼくはブルーノさんの甥でハルアといいます。お店を手伝うためにこの島へ来ました・・・。
 カクさんと、ルッチさんという方に、昼食をお届けにあがりました」

ぱらり、と風呂敷をほどけば、現れるのは見慣れた二つのランチボックス。
な!とパウリーが驚いたのが見えた。
そうか、この子はそういう役回りか。
・・・しかし随分と怖い目にあわせてしまった。
切ってやったロープも未だその細い手首をしめつけ、ぶらりと垂れ下がっている。
この借金男、後でどうしてくれようか。

「あのバカが悪かったのう。どれ、すぐに解いてやろう」

ひゅひゅんっ

「「「!!!」」」

痛々しいハルアの腕に手を伸ばせば、耳に届く風を切る音。
とっさに腕でガードすれば、強すぎる衝撃と共に手に納まる飛来物。
パウリーは頭に直撃を受けて地面に倒れこむ。(生きとるか!?)
手を見れば、予想通り金槌。

「・・・・」

こちらも予想通り、ルッチが立っていた。
仕事道具を投げるなお前は!!
ハルア、と口だけが動き、その表情は分かりづらいが困惑と歓喜が入り混じっている。
涙を見た瞬間、かっ!と目が見開かれた。(ワシじゃないぞ!)
そうじゃろうな、おぬしが一番焦がれておったから。
ああ違った、ワシには負けるから二番じゃった。

「この子はハルアじゃ。
 ブルーノの甥っ子での、あいつの代わりに昼食を届けてくれた」

風呂敷を見せて、状況とハルアの役回りを手早く教えてやる。
そうか、と呟いて、すっと視線が下がる。ん?
追ってみれば、そこにはハルアの手首。
強くしめつけられ、きっとロープを解いても色濃く縄目が残っているだろう。

「・・・・」
倒れたパウリー(いや本当に死んでるんじゃなかろうか)を睨んだかと思うと、ずんずんとこちらへ寄って来た。
え、あ、おわ!!

つ、突き飛ばされた!!?
「何をするんじゃ!!・・・っておい、何を」

待て、この男何を。
ぽかんと見上げるハルアを以前より更に熱い視線で見つめ、手首のロープを解いたのは良い。
だが、なぜその痛々しい手首に顔を寄せる!?
待て、待て待て待て!!

「「!!!!!!!」」

がぷり、と。
そりゃもうがぷり、と、その細い手首に噛み付いた。
おまえええええええええ!!

「あ、え、え!?」

困惑するハルアに構わず、そのまま顔を離そうとしないルッチ。
まるで縄目の上から被せるように、いくつも歯形を残していく。
歯形はついに手首を一周し、ハルアの手首は縄目やら歯形やらでもう何がなんだか分からないことになっている。

「い、あひゃ、あああ!?」

仕上げのつもりなのか、手首をべろりと舐め上げやっと顔を上げた男はこう言い切った。

「・・・俺はロブ・ルッチ。ハルア、お前に一目惚れをした。クルッポー!」

よろしく、と見つめる視線はひたすらに甘く、熱く。
顔を上げたパウリーのお決まりの叫び声が、晴れた空によく響いた。



何度だって君に心奪われる



「破廉恥だっ!!!」
「今回ばかりは同意じゃパウリー!」
「ハルア」
「こらあああ涙を舐めるなああああ!!」
「破廉恥だあああああああ!!!」
「ええいやかましい!!」
「ハルア、ハルア、ハルア(ちゅっちゅ)」
「だからやめんかあああ!!!」
「(ぽかーん)」



あとがき

わーい再会しましたおめでとう!!
そして色々とご乱心なルッチさん(笑)
しかしいまいち腹話術の口調が分かりません・・・。
この再会のシーンは当初から考えていたものなので書いていて楽しかったです。
とりあえずルッチさんが手首噛む!っていうのは決定事項でした。←
管理人:銘


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