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「とりあえず、この子をどちらかの部屋へ連れて行こう」

「ん、そうじゃの」

ぎゃんぎゃん喚く二人に舌を出していると、ブルーノがハルアの頭を軽く撫でながら状況を思い出させてくれる。
そうじゃったそうじゃった、この子をどうにかせんと。

とりあえずはその場から近かったワシの部屋に運び、給仕が整えてくれたのであろうベッドに寝かせてやる。
指銃と嵐脚が飛び交う中を剃と月歩で振り回されたせいか、ハルアは起きる様子がない。

長官の所へ行ってくると言うブルーノを見送り、改めてハルアを眺めてみる。
さっきよりかは顔色も良くなり、血の色が戻ってきている。
肌は白い割に頬が赤いのがなんとも子供らしく、つついてみれば柔らかかった。
抱いていた時にも思ったが、この子供は林檎と太陽の甘く優しい匂いがする。
目を覚まさないのを良いことに顔を近づけて嗅いでみれば、うむ、やはり良い匂いじゃ。

「!!!!!」

「お、起きたかの」

遊んでいる内にハルアが目を覚まし、目の前のワシに驚いたように大きな目を更に見開いた。
あわあわと慌てる様を楽しみながら、事の次第を教えてやる。

「カク様、ありがとうございます! ご迷惑をお掛けしてしまって・・・」

「かまわんよ。それにどう考えたって悪いのはあのおっさん二人じゃ」

「お、おっさん・・・!」

現在のCP9の中では最年少のカクから見れば、あの二人だって立派なおっさんである。
「CP9のメンバーでは、ワシが一番おぬしと年も近い。まあ仲良くやろう」

手を差し出せば、ハルアは驚いたようにこちらを見てくる。
「ワシと仲良く、は嫌かの?」
わざと意地の悪い言い方をすれば、慌てたように自分の手をエプロンで何度も擦り、こちらの手を握ってくれた。
ぎゅっと小さな手を握ってやれば、へにゃりと笑う。
初めて見た笑顔は、眩しくて思わずぱちぱちとまばたきをしてしまった。

光栄ですと照れるハルアに、犬の耳と尾の幻覚を見た。
髪とエプロンと同じ色の、黒い耳と尾はとてもよく似合っていた。
なんじゃ、ワシもあのおっさん二人と同類か。
しかしあの二人にこんな姿を見せれば、間髪おかずに飛び付いてくるのだろう。

それはまあ、何と言うか、
・・・ちと不愉快じゃのう。

ハルアの頭を撫でながらそんなことを考えてみる。
このつまらない島で手に入れた可愛い弟分だ。
あんな二人にわざわざくれてやることなど。

「なんだ、随分仲良くなったな」

「おお、帰ったかブルーノ!」

弟分ができたぞ!と笑うとため息を吐かれた。失礼な奴め。

「俺はブルーノだ。もう起き上がって大丈夫か?」

給仕室で貰ってきたというホットミルクをハルアに手渡すブルーノは、まるで父親のようにも見えた。
申し訳なさそうにそれを受け取り、ありがとうございます、いただきます、とカップに口をつける。
しかし言葉づかいといい、よくできた子供じゃ。
ブルーノも同じようなことを考えたようで、見たことも無いほど穏やかに微笑んでいた。

ほのぼの家族団欒

そんな言葉が似合いそうなこの空気は心地が良かった。(もちろん父親がブルーノ、長男がワシで次男がハルア)
しかし、邪魔者というものはどこからともなく湧くものだ。

「・・・ここにいたか」

「てめえ一人で逃げてんじゃねーよ!」

開かれた扉の向こうから微かに怒りの声が聞こえてくる。
説教から逃げ出したか。つくづく子供のようじゃの。

即座にハルアに歩み寄り、手を取って熱い視線を送っているルッチに、ジャブラがやめろ離れろ消えろと噛み付いている。
呆れたブルーノが何かを言っても、二人はぎゃんぎゃんとやかましい。

「やめんか!ハルアが困っとるじゃろう」

先ほどのフクロウのように二人からハルアを取り上げる。
ぎろりと睨んでくるが、ブルーノがさっと前に立ってくれる。
うむ、さすが父親。

「カリファー!脱走した二匹はここじゃぞおおお!!」

「「!!!!」」

叫んでやれば次の瞬間にはカリファ、フクロウ、給仕長の三人が駆け付けた。
えええ、二人についてくるとは給仕長何者じゃおぬし!
それと同時にバカな犬と猫も姿を消す。
せいぜい逃げ回れ、邪魔者め。

ぽかんと口を開けるハルアの柔らかい頬をつまんでみる。楽しい。
すると、ブルーノも反対の頬をつまむ。

「はうはま?ぶうーおはま?」

「安心せい。兄ちゃんと父ちゃんで護ってやるからの!」

「・・・誰が父ちゃんだ」

へにゃりと笑ったハルアの周りに、今度は花が咲いた幻覚を見た。



ぼくの家族になっておくれよ



「・・・なあ、ハルアにコーヒー頼んだのに全く来ねーんだが」
「ハルアならーあ!また追われていたぜ〜い!よよい!」
「またかよ畜生―!!」
「今はカクとブルーノに構われてるぞー、チャパパー」
「はあ!?あいつらもかよ!」
「ついにCP9全員おとされたチャパパー・・・」


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