▼幼馴染のローさんに死なせてもらえない

故郷の北の海で幼馴染だった2人。
男主は小さいころから体が弱く、じわじわと四肢が動かしづらくなっていく。それでもローさんが「お前は俺の傍にいりゃ良いんだよ」とか言って無理やり海に連れ出しちゃう。口には出さないけど幼馴染が好きすぎてやばいローさん。故郷でさよならなんて選択肢は考えたことも無かった。
男主も、うだうだ言いながらもローさんに流されてくれる程度には幼馴染を大切にしてる。でも文句は言うよ!


「言っとくけど、おれ海では塵ほどの役にも立たんぞ?もう左手とか上がらないんだけど」
「っは、今更何を言おうと、とっくに海の上だ。ぐだぐだ言ってないで寝てろ」
「キャプテーン、いっぱい仲間できると良いねー!」

そして当然のごとく既にいる喋る白熊。


でも、ローさんたちが故郷を出てから男主の容体が悪化して、もうほとんど身体が言うことを聞かない。
ローグタウンに着くころには「ああ、勝手に連れ出されたのにもう死んじまうのか…」と、動かない腕の代わりにベポに遺書の代筆をしてもらう。
その頃から既にばっちり外科医だったローさんにもどうしようもなく、ローグタウンの病院で自分を助けようと必死な幼馴染の顔を見ながらそっと息をひきとった。


と思ったら

「あ、キャプテン!男主が起きたよ!ちゃんと目開けたよ!!」
「…は?」

あれ?ここどこ?偉大なる航路?いつの間に入ったの?
って言うかおれ生きてる?は?

「身体が…動く…!?」
「よう…どうだ、生まれ変わった気分は」

ベポに鏡を見せてもらって仰天。自分の顔じゃない。自分の身体でもない。
体つきも顔も、どことなく似ているけど明らかに自分じゃない。四肢は動くし息もできる。目も開けていられる。
まさか…と思ったらそのまさかで、ローさんがローグタウンで“新しい顔”ならぬ“新しい身体”を調達して、能力で精神を入れ替えちゃった。
入れ替わった相手は!?って問い詰めても、まあそりゃ今頃葬式だろうな、とか何でもない風に言われて愕然。ベポはよく分かってないし、とりあえず良かったね!と喜んでくれるけど、あれ?おれもしかして人間としてやばいんじゃない?


こうしていったんは健康な身体を手に入れて航海を続けるけど、そのうち前の体と同じ症状が出始める。
そうするといつの間にかまたローさんがよく似た風体の“次の身体”を調達してくる。男主の体が動かないのを良いことに意見まったく無視で、毎回息をひきとる寸前に“次の身体”へ。

ちょうど良い身体が手に入らなかった時は、一時的なつなぎとして動物と入れ替わったりさせられる。犬にされた時はそりゃもう一日中モッフモッフされる。「まあ待ってろ。次の島でちゃんとヒトにしてやる」とか言いながらもモッフモッフにご満悦なローさん。「また死ねなかったのか、おれは」とかそんなの聞こえない。


偉大なる航路を進むうちに、帆船は潜水艦になったし仲間も増えた。ローさんの懸賞金も順調にあがっていく。
その頃には男主の身体はもう何人目か分からない。
年恰好や顔の似ている身体を選んではいるけど、伝言ゲームの要領でどんどん元の容姿から離れていく。あれ?おれの顔ってどんなだっけ?状態。
他の船員はちゃんとした説明は聞かされてないけど、ローさんの男主への執着っぷりと、定期的に「おいお前ら、今日からの男主だ」とか意味わかんない紹介されるので、なんとなく察している。

動けなくなっては入れ替わり
戦闘にまきこまれては入れ替わり
海に落ちては入れ替わり

おれは、いったい何人と入れ替わって、おれの代わりに死なせてきたんだろうか。

贖罪のつもりで自殺をはかったら、気が付いたらニヤニヤ笑うローさんと、とかげの身体でした。とかそんなことも何度かあったり。


「シャチくん、おはよう」
「あ、おはようっす男主さん!あれ、また新しくなってますね」
「そうなんだよ、また死に損ねた」
「キャプテン、昨日の夜ふらっと出て行ったと思ったらこれかあ」
「おれはさあ、シャチくん。最近思うんだ」
「はい?」
「おれの“一番最初の身体”は、もしかしたら手術室のあの冷蔵庫に保管されてるんじゃないか?とか。ローならやりかねないよなあ」
「ははははさすがにそんなー(と言い切れないから恐ろしい)」



夢ネタ
2013/06/04 23:35

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