目の前に置かれた箱に、首を傾げる。白い箱に赤いリボンでコーティングされたそれ。
相手がもし帝人や杏里なら冗談を交えつつも喜んで受け取るだろう。だが、相手はあの、口に出すのも嫌になる俺の大嫌いな野郎―折原臨也だ。喜んで受け取ることなどできるはずもないし、この人からプレゼントを貰う理由もない。
ていうか、こいつからのプレゼントとか何か裏がありそうで素直に受け取ることなんてできねぇ。
それを見た後、臨也さんの方に目線を移して、疑問に思っていたことを口に出す。

「なんすか、これ」
「あげる」
「いや、だから・・」
「何、俺からの贈り物は受け取れないの?」
「アンタが俺にプレゼントなんて、裏がありそうで怖くて受け取れないに決まってんでしょ」
「酷いなぁ、裏なんてないのに」

俺傷ついちゃうよ、と言いながら全然傷ついたような顔はしていない。いつもの胡散臭い笑みを浮かべたままだ。
臨也さんがこれくらいで傷つくような人間なら、池袋は平和だろう。

「ねぇ、開けてみてよ」
「・・なんで」
「いいから」

急かしてくる臨也さんに気づかれないように小さくため息をついてから、箱を手に取ってリボンをほどく。ちらっと奴の方に目線を向けると、子供のように楽しそうな笑みを浮かべて俺が開けるのを待っている。なんか、こわい。
何かホントに裏があるんじゃないかと、ドキドキしながら俺は箱の蓋を開けた。
「これ・・」
「どう?俺からのプレゼント、気に入ってくれた?」

箱の中には、また箱が入っていた。その箱は、ドラマとかで見覚えのあるものだが、今この場で、というか彼からの贈り物で目にするとは思わなかった。
驚いてそのまま固まっていると、いつの間にか前まで来ていて、俺が手に持っていた箱をそっと取って開けてみせた。

「それ・・」
「言わなくちゃわからない?」
「な、なんで」
「さっきからなんで、が多いねぇ。まぁ、正臣くんが疑問を持つのも仕方ない、かな?」

それから臨也さんは君、今日がなんの日か覚えてる?と聞いてきた。

・・今日?何かあったか?つか、何かあったとしても、俺がそれを貰う理由にはならないと思うけど。うーん?

「ホントに君、覚えてないの?」
「?」


「君、今日誕生日じゃないか」


ぽかーん、正しくそんな表現が合う。
この人が人の誕生日を祝うなんて、じゃなくて。俺、誕生日?

「その様子じゃ、忘れてたみたいだね」
「・・うるさい。」
「で。受け取ってくれる?俺からの誕生日プレゼント」

綺麗な微笑みを浮かべたまま首を傾げて、箱の中身―銀色に輝く指輪を見せてくるそいつ、ドキドキしているなんてことはない。信じたくない。

でも、


「しょうがないから、受け取ってあげますよ」


誕生日くらいは、いいかもしれない。





企画『将軍は俺の嫁』様提出


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