注意事項

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 嘆きの島。ツイステッド・ワンダーランドにおいて多島の海と呼ばれる海域に位置するとされるが、地図には載らず、その正確な位置を知るものは限られている。この世で最も冥界に近いとされるこの島が、幼少期よりずっと「異端の天才」と称され続けているイデア・シュラウドの故郷である。
 ザリ、と足元の石によって擦れた音が洞窟内を反響する。この島の大部分は剣山の如く岩に覆われており、生物は昼夜を問わず薄暗い洞窟で生活せざるを得ない。イデアが今進むこの場所とてその一つだった。歩くたびに彼の持つその不思議な炎を纏った髪が怪しげに揺れ、その場に残像を残しゆく。島のあちこちで空に灯る青いランタン同様に、それはこの世のモノならぬ陰鬱な空気を醸し出していた。
 たとえ地図に載っていたとしても、そして、マジカメ映えを狙うモンスターどもがどれほど常識知らずであっても、冥府に直結していると名高いこの島にだけは観光にやってくることなどないだろうとイデアは思っている。誰だって、たった一つの命は惜しい。居住者とて実際のところ、冥府の番人と名高いシュラウド一族くらいのものである。その他の島に住み着いた生物の大半は、冥府に片足どころか半身浸かったくたばりぞこないか、冥府に縁のあるものばかりであるのだからイデアが人間に対してアレルギー反応──仮に陰キャ・シンドロームとでも名付けようか──を生じさせることすら、しょうがない気さえする。
 洞窟内の凹凸の激しい岩肌は、およそ年中室内に引きこもり画面に向かっていたいとの願望を抱くイデアには、些かばかり荷が重い。はぁと微かな息切れによって漏れ出た息は、白くも染まらずに闇に消え失せた。原初、世界は闇だった。ならば、この世は未だ始まってすらいないのかもしれないと、青く灯るランタンの持ち込みすら許されない殊更暗い洞窟の中でイデアはそう愚考した。そうであれば、己の罪とて存在しないのに。嘆く彼の歩みは、それでも止まることはない。青く光る彼の髪が仄暗く彼の身体だけを灯している。

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