馬鹿達
同棲してます
大学生くらいです
兼←政







「政宗ー、ここ触ってくれ」
「胸?どうした」

スーパーの店内は空調の利きすぎで少々寒い。そんな中、魚介類コーナーにからあさりを2パック持ってきた兼続が儂のかごにそっと入れた後に言ってきた。

「たっちゃった」
「馬鹿やろう」

寒くて気づいていたら乳首がたっていて無性に可笑しくなって儂に伝えにきたらしい。馬鹿とは言ったがなんでかわからないがツボに入った儂は声を出して笑ってしまった。平和な夏休みである。

兼続は年齢的に言えば一つ上になるのだが、浪人して学年が一緒になった。昔からの付き合いではあったがまさか大学まで一緒だったとはお笑いだ。入学式の日に地元駅で偶然会って行き先を聞いたら同じ場所だったのでもしやと思い大学名を聞いたら自分もこれから通う所だったので2人してホームで電車爆笑したのが今年の4月だった。

「あさりで何を作るんだ?」
「あさりと、ニンニクと、オリーブオイルと、」
「蒸し焼きか!」
「違うわ!蒸し焼きには酒も使うわ!覚えておれ!最後まで聞けよ、パスタじゃパスタ!」
「パスター?腹持ちならぬな」
「本当えらそうじゃな。米も炊くから安心せい」
「わかった。ビール買っていいか?」
「おう、もってこい」

踵を返して今度は酒コーナーに向かう兼続を見てつまみを何にしようかと考え野菜コーナーに向かう。オクラで良いかな。丁度食べたかったところだ。






「うまい!」
「だろう?儂も今そう思った所じゃ」

儂の作る料理は天下逸品なんじゃというとハイハイ政宗様こそ天下無双デスと適当に流されるのが小憎たらしい。続いてあさりは殻があるから面倒くさいというのでお前はイカでも食ってろと言ってグラスに注いだビールを一口飲んだ。誰が飯を作っているかと思っておる。

「イカはコレステロール高いんだぞ」
「そんなもの若いから大丈夫だ」
「あのなぁ、二十歳からどんどん低下していくんだぞ!」
「なにがだ」
「…義の力とか?」
「意味が分からん」

こんな事でゲラゲラ笑えるようになったのも同じ所で飯食って寝てるからかもしれない。以前は追いかけてばかりだった気がする。一学年の差は結構大きいものがあって、中学や高校の時はなかなか共通する物がなく苦労した覚えがある。あ、会話にな。学校の話をする兼続は儂の知らない男でなんとなく焦燥感を感じていた時もある。

「ビールうめー」
「夜風に当たって飲むビールはうまいな」
「政宗おっさんくせー」
「酔っとるな」
「酔ってなどいない!義の戦士は酔わない!」
「日曜朝の戦隊物の真似はよさないか」

もう少し大人な話とかができると思っていたのだが現実はそう甘くはないのだな。焦燥感を感じていた過去が懐かしいわ。カムバック儂の過去。そこには凛としていつまでも儂の模範だった兼続がいた。

「政宗ぇ、お前かっこいいなぁ」

だめだこいつ完全に酔ってやがる。不義の戦士ではないか。

「格好良くなどないぞ」
「彼女作らないのか」
「男と同棲してるからな」
「どうせい?ルームシェアだろー」
「そうともいうな」
「なぁ、作らないのかー」
「おまえがいる限りな」
「なら安心だー」

そう言って寝てしまった兼続にため息をつきタオルケットをかけてやる。妻か!儂はお前の妻か!

「同棲してくれないかと言ってきたのはおまえだろうに」

ルームシェアと言う言葉に胸につかえた何かを取り払いたくてベランダの窓を全開にして灰皿を持ち出し煙草に火をつける。…何が安心だ。おまえの言う言葉は理解しかねる。

払える家賃がないので良かったら同棲してくれませんか。

4月の最終の日曜日、儂の家(上京したのでもちろん賃貸だが)にくるなり節目がちで言ってきたのがこの男、直江兼続である。大学では一人暮らしをするのが家での約束だったらしく1ヶ月間暮らしてみたがどうもうまくいかない。家賃も払えないし料理も出来ないし死にそうだったので政宗に頼ろうと思ったらしい。とんだダメンズ。お前が伊達男なら俺は駄目男だな!と大笑いした奴の股間を思い切り蹴った時もあったな。兼続、そこ笑うとこ違うから…。

「兼続おまえ……」
「もう帰れる家がない」

驚いたことにこやつは今まですんでいた家の契約を解約してきたと言った。儂がうんと言わなかったらどうしたのだ。

「それは考えつかなかった。」

大馬鹿者じゃ。

「だって、お前俺の事好きだろう?」

その言葉で儂は自分の気持ちに否応なく気づかされたのに、



「何が彼女つくらないのか、とな」



純粋に焦燥感を感じていた、目をつぶれば凛とした儂の模範だった奴がいる過去カムバック。兼続に恋い焦がれている現在なんて儂には不必要なのじゃ。目をつぶってももう何も出てこない。こんな思いをするならこいつをここに入れなかったのに。

短くなった煙草を灰皿にいれ新しい煙草に火をつけた。

煙草のように短くなったら捨てるような恋ならよかったのに。







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