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私をダンスに誘ってよ
ショッピングモールの入り口でぼんやりと外を眺めていると、ぽんぽんと肩を叩かれた。後ろを振り返ると、いつの間にか大きなショップ袋を持っている跡部さんが立っていた。

「ほらよ」
「……え?」

ずい、と跡部さんがその袋を押し付けてきたので思わず受け取ってしまった。その袋に印刷されているロゴは間違いなく私がさっきまでいたお店のもので。

「あ、あの…私があまりにも似合ってないから呆れさせちゃったんじゃ…」
「…バーカ」

そう言って跡部さんは私の頭を小突いた。

「え…じゃ、じゃあ」
「似合ってなかったとは言ってねえ」
「…!」

決して「かわいかったよ」とか「すごく似合っていたね」などと手放しで褒められたわけでもないのに、舞い上がってしまう自分がいた。この人に認められたい。自然とそう思えてしまう。跡部さんはすごい人だ。
こっそり袋の中を覗くと、予想通りあの最後に着た真っ白なワンピースがまるで宝石のように輝いていた。



お店を出ると、道路の前に止まっていた黒くて無駄に長い車を指して跡部さんが「乗れよ。家まで送ってやる」と言ってくれたのだが、丁重にお断りした。ただでさえ服(しかもお値段の張る)を買ってもらったのに、今日出会ったばかりの人にそこまでお世話になることはできない。

「本当にありがとうございました」

車の窓から顔を覗かせた跡部さん。恐ろしくこの車が似合っている。

「ジローにはきちんと謝罪するよう言っておく」
「ジロー?…ああいえ、大丈夫ですから」

私にジュースをぶっかけたあの金髪の男の子のことだろうか。正直彼のことなんて跡部さんに指摘されるまで忘れていた。それに、代わりにこんなに素敵な服を頂いちゃったしね。そう言うと跡部さんは黙って私の目をじっと見た。何か、まずかっただろうか。

「来週」

突然声を張り上げられたので少し驚いた。来週、何かあるのだろうか?

「俺様主催でパーティを開く」
「しゅ、主催?」
「それにその服を着て参加するんだ。いいな」
「は、」

反論する間もなく車の窓を閉めてしまったので、私と跡部さんのコミュニケーションツールは分断された。…ちょ、ちょっと待った。パーティって、…何の?

「あ、あの!!」

私が叫ぶと、それに応えるかのように再び窓がウイーンと開いていった。

「俺様は跡部景吾。氷帝学園中等部テニス部部長だ」
「私パーティーなんて、」
「文句があるなら直接氷帝に来い。じゃあな」

私の反論は窓が閉まる機械音に掻き消されてしまったようだ。跡部さんを乗せた真っ黒な車は、あっという間に見えなくなってしまった。残されたのは呆然と立ち尽くす私と、ブティックの袋だけであった。
…文句?あるに決まっている。というか文句しかない。パーティーなんて無縁な庶民の私が参加できるはずがないのだ。かくなる上は乗り込んでやろうじゃないか。その氷帝学園中等部とやらに。……ちゅ、中等、部…?

「跡部さんが、年下…?」


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