ジロくんからの受信メールが減ったことがわざわざ顕著に数字で表れはじめた。以前は毎日のようにメールのやり取りをしていたのに、今は週に一度くるかこないか。今になって考えてみると、メールでの口調も少し荒っぽくなった気がする。 只単にメールに飽きてしまったとは考えにくい。なぜなら丸井にジロくんのメールを見せびらかしたあの日以降ぱたりとその数が減ったからだ。 それだけだと言えばそこまでだけど、丸井もそれ以来私に近寄らなくなった。二つの因果を無関係だと判断するにはタイミングが合いすぎているような気がする。二人が仲良しなら尚のことだ。 名探偵名前が推測するに、二人は実は喧嘩しているのではないかな? ◆ 「あれ…?ジロくん?」 しかしその考え方がひっこんだのはたった今、ファミレスで仲良くケーキを食べている二人を道路からガラス越しに見かけたからだ。ジロくんはケーキもそこそこに、丸井の話に夢中になっているようだ。それに対し丸井の視線は携帯から離れない。せっかく話しているのに意味がわからない。 …ジロくん、こっちに来たら私に連絡するって言ってたのにな。彼にとっては只のその場しのぎの言葉だったのかもしれない。 でもその時私はちょうど珍しくジロくんとメールをしていたので、「今丸井とケーキ食べてるでしょ」なんて送ろうかと思っていた。急に入っていってびっくりさせるのも良いけど、立海の生徒が他にもいる中、一人でファミレスに入る勇気は持ち合わせていなかったため断念した。 「うわっ」 新規作成画面に入ったと同時に新着メールを受信した。突然振動し始めた携帯に心臓を脅かされながらもすぐにそのメールをチェックする。今までメールをしていたからたぶんジロくんからだろう。 ケーキをひとくち口に運んだジロくんは(と丸井)外にいる私に気付かない。そのメールの差出人はやはりジロくんだった。このとき私は何か違和感を感じつつも、それがどこからくるものなのかは検討もつかなかった。 「……?」 メールを開いてみるとそこには『好きだ』と三文字だけ打ち込まれていた。 「え?な、なんで」 私はこのとき二つほどおかしな点を感じていた。一つ目は今までたわいもない話をしていたというのに、どうしていきなりこんなメールを送ったのか。それは不思議とジロくんが本当に私のことが好きなのかということより気になってしまった。 二つ目は、先程から感じていた違和感の正体だ。ああ、なんでもっと早く気付かなかった?今さっきメールを寄越してきたはずなのに、ジロくんは携帯なんてまるで気にしていないじゃない!しかしどういった経緯でそうなっているのかは私のちっちゃい脳ではとても想像がつかない。 どうしてどうしてどうして?私の知らないところで何かが起きてる。もう人目なんて気にしてられない。 私はファミレスの重たい扉に体重をかけた。 0206 |