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最近、ブン太の態度がおかしい。幼なじみらしく家に遊びにきたってろくに口も開かず自分で持ち込んだ最新のゲームに夢中である。おかげで私は手持ち無沙汰になり、むすっとした顔でブン太を見つめるのだが、そんな私に気づいていないのか、はたまた気づいていながら無視しているのかはわからないが、とにかく彼の視線がピコピコ言ってるその箱から離れることはなかった。

「ブン太」

名前を呼んで、昔よく冗談でやっていたようにゲームの電源をオフにする。以前はこれをやるとブン太は憤怒した。その反応がおもしろくて、何度も何度も繰り返し悪戯を施していた私(今考えるとどんな悪童だったんだ)。しかし今日に限ってブン太は全く怒ることなく、それどころか真顔でこちらを見つめてきた。…逆にこわい。

「…お前はさー、男女間の友情って成立すると思う?」
「は?」

何を言ってくるかと思いきや、とんだ的外れな発言がその口から飛び出した。私はぽかんと口を開けたままブン太を見た。彼は相変わらず真顔だ。

「俺はもちろん答えはイエスだと思ってる。じゃなきゃ俺とお前の関係に説明がつかねえ」
「は、はあ」

別に幼なじみなら幼なじみで良いと思うのだけれど。しかしブン太が言うには、本人たちはそれで良くとも周りがそうはいかないらしい。…一理あると思った。

「何で俺とお前が手つないで歩いてたらおかしいの?何で家族が留守中で誰もいないお前んちに行ったらいけねーの?何で周りの奴らは俺らのことじろじろ見てくすくす笑ってんの?」
「ブン太…」
「わけわかんねー」

いくら幼なじみだと説明したところで、周りは何もわかっちゃくれないのだ。やっぱり付き合ってたんだあの2人、と持て囃される。なぜなのか。それは私たちが思春期で、大人になりつつあるから。…じゃあ大人になったらブン太とは一緒にいてはいけないのか?
同じような疑問を抱いてここ最近もんもんとしていたらしいブン太。瞳は不安気に揺らいでいる。

「…あーあ。もういっそ“周り”がいなくなっちまえば楽なのに。そしたらお前とずっといても誰にも何も言われねーだろぃ?」

自分が何かとんでもないことを言っていることに気づいていないのだろうか。
ブン太はため息をついた。さすがに、現実と虚像の区別ぐらいはつくらしい。

「他人になるか、カレシカノジョになることしかないって言われたら、俺らどうする?」

ブン太が笑いながら言う。

「幼なじみでいいよ」
「だからその選択肢はないんだって…。まあ俺もそう言うだろうけど」

この空間が居心地が良いのはブン太も私も同じのようだ。思春期なんてこなくていい。

「もし私に彼氏ができて、部屋に居合わせたらどうするのよ」
「ん?追い出す」

顔を見合わせて笑った。どうやら私とブン太の意見はどこまでいっても同一のものらしい。明日にはまた、誰の目も気にせず二人並んで登校する私たちの姿があるだろう。


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