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※ただの捏造


「強さの秘訣を教えて下さい跡部様!!!!」
「………」

床に擦りつけているせいか、おでこが心なしか熱い。何も言葉を発しない男子テニス部部長の跡部サマ。その無言のせいで私は顔を上げるタイミングを見事に失っていた。…こんなに下手にでるつもりじゃなかったんだけど。仮にも私女子テニス部の部長だし。

「……お、おい何事だよ」
「お前、顔上げろよ…」

何も知らない他のレギュラー陣(声しかわからないが、今のは恐らく向日くんと宍戸くんだ)が狼狽したように私に声をかけるが、跡部様が何も言わないことには私は顔を上げるわけにはいかない。

「……昨日言ったことをもう忘れたのか、アーン?」
「…そこをなんとか」

私がそう言うと跡部様はハァ、と男のくせに妙に色っぽいため息をついた。レギュラー陣の中で唯一事情を知る忍足くんが「もう勘弁したり」と苦笑い。おそるおそる顔を上げて跡部様の表情を伺う。

「…仕方ねえ。準レギュラーでもいいならコーチをつけてやろうじゃねえの」
「っありがとうございます!!!」

立ち上がって頭をぶんぶん下げる。そんな私の様子を見てぽかんとしていたらしい向日が「昨日言ったことって何だ?ていうかそもそもなんで女子テニス部がここにいんだよ」と忍足くんに説明を要求した。が、忍足くんの手を煩わせるわけにはいかない。私は自ら挙手してから説明を始めた。

「私たち3年って、もう引退が近いじゃないですか」
「そうだな」
「でも女子テニス部はあなた方に比べてろくな戦績を残していないんです!私もこのまま引退するわけにはいかないんです。それで強さの秘訣を跡部様に教えていただこうと…」
「だが俺様は忙しいからな」
「準レギュラーの奴らやったら何とかなるやろ」

忍足くんにも感謝だ。跡部様が折れてくれたのは彼のおかげなのだから。説明を聞き終わった向日くんは「ま、別にどうでもいいや」と言ってどこかへ行ってしまった。自分で聞いたくせに。

「ユニフォームが激ダサだぜ」
「え」
「それじゃ勝てるもんも勝てねえな」

なぜか宍戸くんには挑発された。彼もそう言って部室を去って行った。忍足くんはそんな彼らの様子を見てまたもや苦笑いし、それから私の肩をぽんと叩いて「自分のこと応援しとるで」と言ってくれた。優しいなあ。

「………」
「(跡部様が見てる…)あ、あのよろしくお願いします」

なんだか気まずくなってそのまま挨拶をして部室を去った。ともかく、頼み込んだ甲斐があった。これでうまくいくといいけど。



「何だ、なかなか見込みあるじゃん」
「本当ですか?」
「お互い頑張ろうね」

準レギュラーに指導してもらっている我が部員たちを見渡す。うん、ちゃんとやってるじゃん。滝くんと今日はここまでにしよう、と決め集合をかけた。しかし、私も練習しないと。帰りに土手にでも寄ろうか。



「お前、まだやってたのか」
「…!わ、私はどうしても指導する側になっちゃうから、練習する時間がなくて…」

少し冷たい風の吹く川べりで、帰宅したはずの跡部様が私の目の前に現れた。

「気が変わった。てめえの専属コーチにならなってやってもいいぜ」
「跡部様…」
「いつまで“様”つけてんだ。気色悪いな」
「…景吾」
「ああそれでいい」

私の背後で厳しくフォームのチェックをする景吾が微笑む気配がした。

「私のコーチがあなただってばれたら大変なことになりそう」
「いっそばらしてやろうじゃねーのよ」

俺とお前が付き合ってるってこともな、と後ろから抱きしめられた。夕日が目に染みる。

「…コーチ、こんなフォームあるんですか」



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