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「あれ、ジローちゃん机に突っ伏して寝てるよ、珍しい」
「ああ、俺様がたまには授業に出ろと脅したからな」
「(ジローちゃんが跡部くんの脅しにのるか…?)ポッキーで釣ったのね」
「アーン?」
「おーん」

跡部くんが眉間にしわ寄せて睨んできたけど、彼と親しくなってしまった今では怖くもなんともないです。こんな学園の中心人物と親しくなってしまうなんて思ってもみなかったけれど、彼と並んで廊下を歩く姿もなかなか板についてきたと思いませんか?そういえば跡部くんとなんか仲良くなっちゃって、ファンに嫌がらせされないかなと真剣にクラスの女子数名に相談したところ、なぜか笑いを堪えながら「あんたみたいな見るからに庶民派で平凡な子、跡部と歩いてたって舎弟にしか見えないから大丈夫よ」と肩を叩かれました。ここは怒っていいところかな?お母さん。
しかし目立つものは目立つもので、跡部くんと歩く廊下はいつも広い。それは皆跡部くんを見るだけで道を空けるからで…。なんか不良の親玉みたいだけれど、それを本人に言うと「俺様はキングだ!」とどや顔で言ってくるので私はいつも「お、おう」としか返せません。
再びC組を覗くとやっぱりジローちゃんが頬杖をついて眠っていたので、去年同じクラスだった頃のジローちゃんを思い出して微笑む。ああ、今でもジローちゃんは女の子たちに天使みたいだとか言われているのかな。天使は天使でもあの絵の天使そっくりだよね。頬杖付いてるから特に。

「サンシストの聖母か」
「あ、あれ?口に出してた?」
「ああ」
「(不良の親玉とかどや顔とかの下りは聞かれて…ないよね?)」
「おい、ラファエロのサンシストの聖母のことだろう?俺様は似てると思わねえがな」
「………」
「苗字」
「あっ思い出したサイゼの壁だ」
「さい、ぜ…?」


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金持ってるくせに庶民派