星が瞬く夜は寂しくなる。空は澄み渡っていて、綺麗なはずであるのに、どうしても切なさが勝るのだ。あの瞬きは、一体、何年前のものなのだろうか。もしかすると、あの瞬きは既に消えているのかもしれない。

「おーっ、今日は星が良く見えるじゃねーの」

 すぐ隣で窓から身を乗り出して、バースデイが言う。あまりにも大きい声だったものだから、うるさい、と一言だけ返した。

「まーまー、いーじゃないの。こんな綺麗な星を見るのも久しぶりじゃね?」
「言われてみれば、そうかもしれない」

 でしょん、と上機嫌な声に眉を下げて、少しだけ微笑む。星を眺めるのは好きだ。それは相棒も同じらしく、星の綺麗な日は寒い日も暑い日も、並んで星を眺めている。

「いつかさ、もっと星が綺麗に見えるとこに行こうぜ」

 バースデイは空に手を伸ばして言った。歯が見えるほどに笑って、バースデイは続ける。

「オーストラリアとか、どうよ」
「俺の金で、か」
「レシオちゃん、このムード壊さないで」

 思ったことを口にすると、バースデイに頬をつつかれた。まあいっか、とバースデイは、頬から指を離す。そこに、柔らかい感触。

「割り勘で、行こうぜ」

 離れた指が、顎から頬を撫でて、眼帯に触れる。名前を呼ぼうと開きかけた唇は、バースデイの唇に塞がれた。

「約束な、レシオ」
「ああ」

 小指を絡めて、破ることの出来ない約束を交わす。この約束が果たされるまで、何年かかっても、俺はバースデイと共に生きる。
 星が瞬く夜が寂しいのは、きっと寒い日が多いから。そして、儚さが彼に被ったからかもしれない。それでも、星を眺めることは好きだ。道標になる光が、彼のようだから。


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