私はバーティミアスを置いてきた。鍋の中に、奴への情も何も、全てを置いてきた。あり得ないのだ、バーティミアスが言っていた、人間と我らが協力することなど。馬鹿げているのだ。何度も、バーティミアスの言葉に揺れそうになった。だが、それはもう手遅れだ。もう、バーティミアスと会うことも無いだろう。
「鉄鍋の中はさぞかし辛かろうにな。バーティミアス」
私は古代ギリシャ語で呟く。厨房ごと破壊したときも振り返らなかった。もう、情に流されるわけにはいかないのだ。
「お前の幸せを一番に願おう」
もう、後戻りは出来なかった。