「サクラとは、散るときが一番美しいと聞きました」

俺の隣に座った愛島が、ニュースの桜開花予想を見ながら言った。どうせ、同じマスターコースの奴等に聞いてきたのだろう。俺は何も言わずに、愛島の次の言葉を待った。

「サクラは咲いている時も美しいのに」

テレビからは騒がしく花見をする人々が中継されている。寂しげに呟いた愛島の横顔は、何故か泣き出しそうだ。

「桜は、散り際も美しくなくてはならない。アイドルも同じだ」
「そうなの、ですか…」

愛島はまだ煮え切らない様子ではあったが、どうにか納得しようとしていた。
散り際も美しく。そうは言うが、散った後、地面に落ちてしまえば醜くなる。雪と同じだ。そして、アイドルも同じかもしれない。テレビやメディアに出るときはきらびやかな仮面をかぶるが、その奥深くには、人間の醜い部分を隠している。

「貴様は、常に満開で居ろ」

どうして、と開いた唇を唇で塞いでやった。醜い部分は無くていい。純粋で、美しいままで、笑っていればいい。もし、万が一散るときがあるならば、その時は、俺の腕の中で散ればいい。桜の様に気高くあれ。


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