今日は、レンの誕生日。セシルはソファのクッションをぎゅうと抱き締める。世間ではバレンタインデーと呼ばれる今日は、大好きなレンの誕生日でもあるのだ。しかし、誕生日当日であるのにも関わらず、セシルはプレゼントを未だに決めかねていた。参考にしようと思い、たくさんの人に聞いたが、全員がむっとして考えこんだ挙句、よくわからない、という返事をした。ふぅ、とため息をついて、クッションに顔を埋める。こんなことをしていても、ただ時間だけが過ぎていくだけで、何も思い浮かばない。それに今日は仕事もある。レンに会えるのは、夜遅く。こうして考えて、じっとしていても仕方ない。セシルはクッションを抱き締めたまま、立ち上がった。
… … … …
結局、昼間の空き時間にプレゼントを探しに行ったが、それらしいものは見つからず、約束の時間になってしまった。じっと俯いてレンを待つ。待ちながらも、どうしようかと考え込んでいた。
「浮かない顔だね」
突然声が降ってきて、セシルは慌てて顔を上げる。そこには、柔らかな笑みを浮かべたレンが立っていた。
「れ、レン…」
「お待たせ。遅くなって、ごめんね」
ふわりと頭を撫でられて、幸せな気分になる。しかし、セシルははっとして、レンの瞳を覗き込む。
「ん?どうしたんだい?」
「レン、Happy Birthday. 今日だと聞きました。それに、今日はバレンタインデーです。でも…プレゼントが…」
セシルの声がどんどん小さくなり、終いには俯いてしまう。所在のないセシルの手が、レンのコートの裾を掴んだ。
「プレゼント、ね…。君がここに居てくれることが、十分プレゼントだよ。ほら、顔をあげて」
顎を持ち上げられて、どうしても目が合ってしまう。ごめんなさい、と開きかけたセシルの唇は、レンに塞がれた。
「何で謝るのかな」
「用意、出来なかった、から」
「必要ないよ。一緒に居てくれたら、それでいいのさ。さぁ、今夜は素敵な夜を過ごそう」
そう言って、レンはセシルにウインクを飛ばした。それから、セシルの冷えた手を絡めとって、肩を抱き寄せる。セシルがその肩に頭を凭れかけさせると、レンはくすっと笑みをもらした。
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レンさまハピバ!
それから、ハッピーバレンタイン!!