※年齢制限じゃないけど、フェイキとバーティがちゅうする
※一方的だから、ちょっと注意






プトレマイオスを、俺は守れなかった。風に当たると、いつもプトレマイオスのことを思い出す。風はいつもよりも冷たい。

「おい、バーティミアス」

背後からフェイキアールに呼ばれて、俺はゆっくり振り返った。よりによって、今の仕事はフェイキアールと一緒なのだ。俺はぼーっとして、フェイキアールを見つめ返す。

「いつまで、そうやっているつもりだ」
「そうやって、って俺はいつも通りだ」

俺は笑って見せた。ちゃんと笑えてたかどうかは分からない。たぶん、笑えていなかったのだろう。フェイキアールはぐっと眉間にシワを寄せた。

「私はお前のそんな顔は見たくない」
「俺は…」

そこで俺は口をつぐんでしまった。俺が一瞬目を伏せたすきに、フェイキアールは俺の目の前に居た。フェイキアールと背後の窓に挟まれて、身動きが取れない。俺は至近距離にあるフェイキアールの顔を睨む。

「過去を振り返ってどうする。過去にはもう戻れない。それとも何だ、やつを本気で求めていたのか」
「…黙れ」

フェイキアールはそこで、プトレマイオスに姿を変えた。俺のプトレマイオスに、俺だけのプトレマイオスに姿を変えた。でも、何かが違う。それが何かは分からない。

「求めていたのなら、私がいくらでも叶えてやる」

フェイキアールはそう言って、プトレマイオスの姿のまま、俺に深く口付けた。俺は、こんなことがしたかったんじゃない。フェイキアールの胸を押し返そうとするが、上手く力が入らない。姿を変えようと思っても、頭がぼーっとしてしまう。俺はふらふらした思考で、フェイキアールを抱き寄せてしまった。しかし、触れてから我に帰る。プトレマイオスはもっと細かった。もっと温もりがあった。髪はもっと柔らかくサラサラしていた。俺は、勢いよくフェイキアールを突き飛ばした。

「ふっざけんなっ」
「だいぶ、お前もその気だっただろう、バーティミアス」
「その姿で、俺を呼ぶな」

吐き捨た俺は、フェイキアールに背を向けて、窓の外に足を投げ出すようにして、腰掛ける。
今ので分からさせられてしまった。もう、プトレマイオスは居ない。守れなかった。だが、フェイキアールの言う通り、過去にはもう戻れない。そして、俺はプトレマイオスを心から愛していた。何も求めず、ただプトレマイオスの心が欲しかった。

「許してやれ、バーティミアス」

振り返ると、いつの間にか姿を戻していたフェイキアールが悲しげな表情を浮かべている。

「いいんだ、フェイキアール」

俺は、漆黒の翼で青い空に向かって羽ばたいた。俺には涙は流れない。ただ、ぎゅうと締め付けられるような気持ちになっただけだった。



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