ぐずぐずとナサニエルは鼻をすすった。どうやら、風邪をひいたらしい。

「人間は面倒だな」

バーティミアスの台詞にため息をついてから、布団に潜る。今日はどうしても、仕事に行きたい。だが、そんなことを考えていたら、頭がクラクラとしてきた。さらには、視界がぼやける。バーティミアスに覗き込まれたようだが、輪郭が掴めない。ふらふらと腕を伸ばすと、手を握られる感覚がする。

「もう、寝ろ」

バーティミアスの穏やかな声と共に、ナサニエルは意識を手放した。



「あ、れ…?」

身体を起こすと、布団の上にタオルが落ちる。布団が濡れないように、とタオルを掴みながら顔を上げて驚いた。陽が沈みかけている。

「今、何時だっ?」
「今か?もう、午後5:30だ」

バーティミアスの言葉を聞いて、ナサニエルは目を見開いた。すぐに、慌ててベッドから降りようとしたが、頭に激痛が走り、そのまま倒れ込む。

「今日はまだ寝とけ。そうしたら、明日には行けるだろう」

そう言った、バーティミアスはサイドテーブルに薬の袋を置いた。

「パイパーが持ってきてくれたぞ」
「明日、お礼を言わなきゃ」
「ほら、さっさと飲んで寝ろ寝ろ!」

ナサニエルはヘッドボードに寄り掛かるようにして、ゆっくりと起き上がる。バーティミアスに見守られながら、薬の入った紙袋に手を伸ばして、ナサニエルは顔をしかめた。

「…どうした?」
「飲めない…」
「え…?」
「薬は、飲めない」
「ん?」

だから!とナサニエルは声を上げたが、酷い頭痛にその後が続かない。頭を抱えて、ため息をつく。その様子を見ていたバーティミアスもため息をついて、おもむろにナサニエルから紙袋を奪った。

「何を…ッ」

ナサニエルが驚いて固まっているのを横目に見て、バーティミアスは水と薬を口に含む。そのままナサニエルの襟を掴んで引き寄せた。

「…ッん、」
「…ちゃんと飲めたか?」

ナサニエルはバーティミアスの問い掛けに、真っ赤な顔で頷く。普通にキスをされるよりも恥ずかしいかもしれない、としばらくそのままでいたナサニエルは、とうとう頭から布団をかぶった。

「薬なんか飲んで、お前の成分は大丈夫なのか?バーティミアス」
「飲み込んでないし、あんまり嫌な感じしなかったから、大丈夫だろう。というか、お前は人の心配なんぞしてないで、さっさと治せ。つまらん」

布団の暗闇の中で、ナサニエルはバーティミアスがとても愛しく感じた。一人で小さく笑い、あぁ、とだけ返事をする。布団から、片手を出すと、やんわりと手を握り締められた。




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