「ひゃっ」
突然耳にふぅっと息を吹き掛けられて、気の抜けた声を出してしまう。後ろを振り返ると、加護が楽しそうに微笑んでいた。
「ずいぶんと可愛い声を出すね」
「突然するから悪い。それに、可愛いって何」
むっとして言い返すと、加護はふふと声を立てて笑った。恥ずかしくなってきて俯くと、後ろから抱き締められる。
「可愛いよ、誰よりも」
耳元で低く囁かれた。その声にドキリとして、俺は口をつぐむ。これから部活があるのに、とも思ったが、それでも何も言わなかった。
「何で、黙っちゃうの」
「変なこと言うから」
「…この後、部活?」
「そう」
俺がそう言うと、加護はごめんね、と言って、さらに抱き締める腕に力を込めた。
「もう少しこうさせて」
それに返事はしなかった。返事の代わりに俺は、加護の手に自分の手を重ねた。