未だに暗闇の中に一人で居ることが出来ない。寝るときも、小さな灯りをつけたままで寝ている。それでも目覚めたときに、頬が濡れていることがある。暗闇に一人で居ると、あの日のことを思い出してしまうのだ。赤々と燃え上がる炎の記憶だけは、今も消えることはない。ふとした瞬間に脳裏をよぎる。

「僕さえ、僕さえ居なければ…」

ナサニエルは何度目かの自己嫌悪に陥り、ぐっと拳を握り緊めた。その手の上にぽたりと涙が落ちる。溢れる涙は止まりそうもなかったが、その後はナサニエルの手の上に落ちることはなく、褐色の手に受け止められた。

「その自己嫌悪の仕方は可笑しいだろう」

バーティミアスは手を引っ込めながら言った。ナサニエルはその言葉に顔をしかめる。自分さえ居なければ、大切な人が居なくなることはなかったのだ。

「でも、それが真実だ」
「そりゃあそうだ。過去を変えることは出来ない」

バーティミアスはナサニエルの頬を伝う涙を、親指で拭いてやる。そのまま手のひらでナサニエルの頬を包み込むと、視線が合うように少しだけ持ち上げた。

「俺は、お前に召喚されたから、お前に出会うことが出来たんだ、ナサニエル」

それを聞いたナサニエルは、泣きそうに顔を歪める。それから、バーティミアスの首に、自分の腕を絡ませて引き寄せた。

「僕は、存在していてもいいのだろうか」
「あぁ、俺が認めてやる」

にや、と口角を上げたバーティミアスに、ナサニエルは一瞬躊躇ってから、ゆっくりと唇を寄せた。どんな暗闇も、一つの光があれば、何も怖くない。


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