※メイクピースvsバティ
※趣味ぶっこみ










正直、俺は早く消えてくれと思った。何故、あいつはあんなに小僧にベタベタと触れるのか。何故あいつは小僧に無駄に顔を寄せるのか。気分が悪い。醜い嫉妬だとはわかっている。だが、見ているだけでいらいらしてくるのは、どうしようもない。とうとう俺は舞台そっちのけで(元から見てもいないが)、その場で立ち上がった。

「おい、静かに見られないのか?なんなら、席でも代わってやるぞ?」

俺が言うと、小僧は助かった、と言わんばかりの視線を送ってきた。しかし、メイクピースは楽しそうに微笑んできた。

「私の舞台を気に入ってくれたのかな?」

その言い方と気色悪い笑みは、俺が何を考えているのか、全てわかっているようだった。これだから、俺は芸術家は苦手だ。俺は腕を組んで、やつを睨んだ。

「こんなものが好きだなんて、よっぽど知識の無いやつか、相当な物好きだな」
「じゃあ、マンドレイクは君からしたら、どちらに入るのかな?」
「そいつはどっちにも入らな…っ!」

俺が小僧のために言ってやろうと思ったのに、小僧に口を塞がれてしまう。

「わ、私はどちらにも当てはまりますよ。しかし、貴方の舞台はどれもとても素晴らしいです。普通の人間であるなら、誰でも好きになります」

小僧は俺の口を塞いだまま、愛想笑いを浮かべて言った。しかも、普通の人間、というところを強調しやがった。小僧だって、舞台はあまり得意ではないはずなのに、よく言ったもんだ。だったら、お前も普通の人間ではないな、と言ってやりたくなった。行き場のないいらいらを募らせながら、俺がメイクピースを睨むと、やつは困ったように笑った。

「そんなに恐い顔をしないでくれ。私は、マンドレイクに他意は無いよ、たぶんね」

その台詞に俺のいらいらは絶頂に至った。ウインクなんてしやがって、気持ちが悪い。俺は塞いだままのナサニエルの腕を掴んで下げさせる。そのまま、腕を引いて抱き寄せた。その光景を見ていたメイクピースは、ゆっくりと目を細めて、ほう、と呟いた。

「バ、バーティミアス?」

小僧は俺の腕の中で小さく声をあげた。それを無視してメイクピースを正面から見る。

「王子様(プリンス)と王様(キング)の闘い、といったところかな」
「いや、王様vs騎士(ナイト)だろうな」
「君は騎士でいいのかい?」
「所詮、俺はこいつを守るだけだ。それだけが俺の目標だ」
「君は随分謙虚だ。もし、君が人間だったら、次の舞台の主人公にしていたよ」
「全力で断る。とにかく、お前は俺には勝てない」
「それはどうかな?それは本人に聞くことにしようか。さぁ、どちらを…」

メイクピースが言いかけたところで、会場に拍手が起こった。実にいいタイミングだ。

「私は下に行かなくてはならない。この勝負は次に持ち越しだ。マンドレイク、君はいい騎士を持ったな。手を離さない方がいい」

それじゃあ、と言ってメイクピースが片手を挙げたとたん、姿が消えた。

「バーティミアス、」
「あー…すまん」
「…もう少し、このままで」

小僧を離そうとすると、逆に引き寄せられる。ふぅ、と息を吐いて、ちらっと舞台を見た。メイクピースは、笑顔で話をしている。小僧はまだ、俺に抱き締められていた。
王様と騎士の勝負は、騎士の圧勝である。


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テーマ「人外ファンタジー」
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