※三巻後捏造




























次の主人に仕えた瞬間に思った。あぁ、小僧が恋しい、と。あれから何年経ったのかはわからない。ぼーっとしながら、俺は命令に従いペンタクルから出た。
仕事中も小僧のことが頭から離れることはない。艶のある漆黒の髪と意志の強そうな黒い瞳、柔らかく冷たい白い肌。今俺はその姿になっていた。俺はふっと自嘲気味に笑う。これでは、プトレマイオスの影を追っていた昔と変わらない。今度は大きなため息をついた。そんなことを考えていたからか、簡単な仕事である追跡も、途中何度かターゲットを見失ってしまった。だが、なんとか必要な情報を揃え、やっと帰路につく。
人混みの通りを歩きながら、俺は過去に想いを馳せた。小僧に仕えたとき、俺はいろんなものを失いすぎた。ジャーボウやフェイキアールのような戦友たち。クイーズルやアスコーボルのような仲間たち。たくさんの知り合いが俺の前から消えた。そして、最後の最後に、俺の一番大切だった小僧を…ナサニエルを失った。当然、ずっと、一緒に居られるとは思ってもいなかった。ただ、もう少し小僧のことを知りたかった。小僧の最期だって、ゆっくり話がしたかった。ちゃんと想いを伝えたかった。だが、俺には口も挟ませず、小僧は俺を解放した。もしも、あの時に戻ることが出来たら、何ができただろうか。俺は何をしてでも小僧を生かしただろうか。いや、考えるのはもう無駄だ。小僧の最期はあまりにも美しすぎた。そこで、全てが終わったんだ。
俺はゆっくりと主人の元へ戻ろうと足をすすめた。いつまでも、小僧のことが頭から離れることはない。だって、ナサニエルが、俺の全てだったから。
俺は、一際強く吹いた風と人混みの中に、ナサニエルの姿を見た気がした。





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