ナサニエルが黒だとしたら、プトレマイオスは白だろうか。
俺はふと考えた。もし、ナサニエルとプトレマイオス、二人が同じ時間軸に居たとしたら…。

「レカイト、今日も君の話が聞きたいんだ」
「バーティミアス、報告は?」

話しかけてくるとしたらそんなものだろう。それにしても、小僧は素っ気ないな。
ぼーっと考えていると、いつの間にか主導権が俺に無くなった。ふわふわとして、異世界に居るような気分。そこに現れたのは、黒い服を着たナサニエルと白い服を着たプトレマイオスだった。

「二人で、何してるんだ?」
「レカイト、君に選んでもらおうと思ってね」

にっこりとプトレマイオスは笑った。

「僕か、彼か、お前はどちらを選ぶ?」

ナサニエルもにやりと口角を上げた。やれやれ、考え事なんてするものじゃあないな。俺は大きく息を吐いた。
そんなことを聞かれても、答えられるわけがない。今までのプトレマイオスの質問の方が比較できないほど楽だった。

「どっちも、って選択肢は…」
「なしだよ」
「なしだ」

二人で同時に、しかも即答された。俺の今後は見込めない。初めて、逃れられない状況だと思った。

「さぁ、バーティミアス」
「どちらを選ぶ?」

俺は一歩後ずさった。背中には銀食器の棚、すでに成分がジリジリしている。こういうのが、背水の陣、というのか。俺は今現在、肌で感じている。

「俺は、どっちも選ぶ気はない」
「レカイト、」
「バーティミアス、」
「それでも選べと言うなら…」

俺はさらに後ろに下がった。どちらかを選ぶくらいなら、成分ごと消えてやる。後数ミリで銀食器に肌が触れる。…嗚呼。

「おい、」「わぁああ、あ、あ…あ?」

目の前にはフェイキアール。俺は間の抜けた声を出した。

「何だ?何でお前が?」
「相当うなされていたぞ」
「あぁ、果てしない悪夢だったからな」

あんな思いはもうごめんだ。それより、どこからが夢だったのか。二人が同じ時間軸に居たとしたら、と考えていたのも夢だったのか。内容を聞かせろ、と迫ってきたフェイキアールを無視して、俺はため息をついた。

「どっちも、選べるわけがない」

だって、どっちも同じくらい愛しているから。


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