カウンターに座ると、いつものようにイズルが飲み物を持ってきてくれる。そのまま、イズルは迷いもなく俺の隣に座った。まあ、スルガはパソコンの液晶を覗き込んでいるし、ケイとタマキは二人で楽しそうに会話をしているのだから、当然と言えば当然か。俺は右手に握った胃薬を飲み物と一緒に飲み干した。

「また胃が痛いの?」
「今日も、ストレスかかったからな」

思い出すだけで、胃がきりきりと痛む。右手で胃のある辺りをさすると、なんとなく痛みが和らぐ気がする。

「どうにかならないのかな」
「どうにもならないんだよ、胃が痛くなるのは」

 イズルの質問に、ため息をつきながら答えた。どうにかなるのなら、俺だって、どうにかしたい。はあ、ともう一度ため息をつこうとしたら、イズルが口を開いた。

「そうじゃなくて、痛みの方だよ。アサギ、辛そうだからさ」

 俺はきょとんとしてしまう。まさか、そちらの心配をされるとは思っても居なかった。何も言えなくなった俺に気付かずに、イズルは一人で、どうしたらいいんだろ、などと呟いている。どうしたらも何も、いつも痛くなったら胃薬を飲んでいるから、少し時間が経てば収まるのだから、イズルに心配してもらうほどのことはない。俺はぼーっと何もないグラスを眺めた。

「あ、アサギ! こっち向いて」

 ずいぶんと弾んだ声のイズルに言われるがままに、イズルの方を向く。ふわりと微笑んだイズルは、俺の額に口付けた。

「はっ!? お前、何して……」
「こうすると、痛みが消えるって、前にどこかで……」

 悪びれずに言うイズルに、つい調子が狂って、思わず笑ってしまう。

「全く……、ありがと、な」

 ため息をついて、お礼を言う。照れくさくて、右手で額を押さえた。イズルの顔は見られない。それでも何となく、イズルが嬉しそうに笑っているのだけはわかった。





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -