ロンドンにも珍しく、ちょっとした晴れ間が見える。そして、小僧の仕事も珍しく、捗っている。自宅で仕事を進めているからなのか。いつもはすぐになくなる紅茶が、なくならないのがいい証拠だ。俺は小僧を横目に見ながら、書類をめくる手を止めた。午後3時。ティータイムの時間だ。

「カップケーキと、スコーンと、クッキー。どれがいい?」

ソファに腰掛けたまま、窓の外を見て聞く。少しの間があってから、書類から目を話さずに、小僧の返答が来た。

「バーティミアス」
「……は?」

何だって? 俺は思わず、小僧を見た。

「えっ?」

何か言った? と言わんばかりの小僧の顔と目が合う。そして、我にかえったのか、驚いたように目を開いたかと思うと、視線をさまよわせた。

「ち、ちが……いや、ちがくもないけど! あれ? 僕は何を言っているんだ?」

今までに見たこともないくらいに焦ったようなナサニエルは、ペンを書類の上に転がす。落ち着こうとして、二三回深呼吸をした。何の質問だった? と聞かれて、ティータイムの話だ、と答えると、大きくため息をついて、背もたれにもたれかかる。

「もう、お前のせいだ、バーティミアス。責任取れよ?」
「ああ、覚悟しとけよ」

視線も合わせずに言ったナサニエルに、ニヤリと笑って言ってやった。このティータイムは、とびきり甘いスイーツを用意してやろう。







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