「もう、俺に関わるなよ!」

気付いた時には、そう叫んでしまっていた。ナツの顔は見られない。でも、どんな表情をしてるかくらいはわかる。きっと、寂しそうな表情を浮かべてるに違いない。そう考えたら、自分に無性に腹が立ってくる。だが、そう思ってしまったのも事実。嫉妬だってこともわかってる。でも、最近ルーシィとばかり一緒に居て、俺に構ってくれないナツだって悪い。それは自分の言葉を正当化するための言い訳でしかない。吐き出した言葉には罪悪感しかない。俺は、ゆっくりと顔をあげて、ナツを見た。やっぱり、寂しそうな表情を浮かべている。俺と目が合っても、眉を下げて笑うだけで何も言わない。いつもの太陽みたいな暖かい笑顔が見たいのに。でも、それを曇らせているのは俺で、悪いのは俺。素直じゃない自分が恨めしい。
いつもそうだ。肝心なときに、自分の想いを表すことに戸惑う。行動するより先に照れてしまうのだ。もちろん、ナツのことは好きで、誰よりも一番好きなんだが、それでも口に出してしまうのは、馬鹿とか嫌いだとか、思っているのとは反対の言葉。ナツに訳してもらわないと伝えられない。好きなのに、大好きなはずなのに。頭の中で悶々と考えていたら、ナツの顔から少しだけ寂しさが消えた。

「グレイはオレのこと、好きか?」

何でそんなことを聞くのだろう、と一瞬戸惑ったが、さっきの言葉の後なのだから当然だろう。俺はナツから視線を反らした。やっぱり、自分の想いを言うのは照れてしまう。でも、今は――。

「す、き……」

俺がそう答えると、ナツは俺をギューッと抱き締める。俺は何て阿呆なんだ。ナツはこんなにも、俺のことを想ってくれてる。

「ごめん、ナツ」

俺はナツの肩に顔を埋めて呟いた。ナツは何も言わずに、もっと力を込めて俺を抱き締めてくれる。もっと自分に、自分の想いに、正直にならないといけない。優しいナツだけど、いつかきっと俺が傷付けてしまうだろう。そのいつかがないとは限らない。ナツの笑顔を曇らせたくはない。




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