全くもって理解が出来ない。小僧の考えていることが理解出来る日が来ることは無いだろう。俺の言ってることをずっと無視していると思ったら、急に俺の顔を見て赤面したり、紅茶を淹れてこいと言った癖に、俺の服の裾を掴んで引き留めてみたり。何を考えているのか、俺には理解出来ない。

「小僧、」

反応無し。

「おい、聞こえてるだろ?」

また反応無し。だが、ページをめくる手が俺の声に反応して一瞬だけ止まる。それくらいの変化などすぐにわかる。だから、俺の声が聞こえていることは確かだ。俺はむっつりとしたまま、ナサニエルのそばに寄った。

「ナサニエル、」

耳元で囁いてやる。ナサニエルの顔が一瞬にして真っ赤に染まった。何、とたずねるようにナサニエルが俺を見上げる。

「聞こえてるなら、返事ぐらいしろよ」
「僕が呼ばれているとは、思わなかった」

何が、思わなかった、だ。この部屋には俺とナサニエルしかいないのに。ナサニエルは嘘をつくのが下手だ。その名前で呼ぶな、と言う癖に、本当は呼んでもらいたいらしい。全く理解が出来ないな。

「ナサニエルを呼んでほしいなら言えよ。俺はいくらでも呼んでやるから」
「そ、そんなことは言ってないっ」

そう言って、顔を背けたナサニエルの頬を両手で挟んで、嫌でも目が合うようにしてやる。しばらく何も言わずに見つめあってから、俺はにやっと笑った。

「わけのわからない奴だな、ナサニエル」

ナサニエルが文句を言おうと唇を開きかけたが、俺がそれを塞いでやった。わからなくても、理解出来なくても、俺の知っているナサニエルは、ここに居る。





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