またやってるのか。俺は二人の様子を見てそう思った。じりじりとジャーボウを壁に追い込むフェイキアールと、意味が理解出来ていないが、とにかくいらいらしているジャーボウ。フェイキアールもよく懲りないな、と俺はため息をついた。

「お前は何度も何度も俺を壁に追い込んで、そんなに楽しいのか!」

ジャーボウが声を上げた。俺としては、ジャーボウがフェイキアールに何度も追い込まれていることを覚えているということに驚きだったのだが、まぁ、それはどうでもいい。俺は二人の見物をしながら、座った椅子の上で足を組みかえた。

「これからお前は私に何をされるか、分かるか」
「そんなことぐらい分かる」

そんなことジャーボウが理解できているとは到底思えないな、という俺の呟きは、ジャーボウの声にかき消された。俺もフェイキアールもその場で固まってしまう。

「今から、お前は俺を喰らおうとしているんだろう。そのぐらい、分かる」

あぁ、確かにそうだろう。だが、ジャーボウが思い込んでいる意味と、フェイキアールが本当にしようとしている意味は違うだろう。俺は二人に哀れみを感じて、静かに見守ることにした。

「分かっているじゃないか」

フェイキアールは満足げに頷く。実は、ジャーボウだけじゃなくて、フェイキアールも案外阿呆なのかもしれない、と思ってしまった。

「俺はうまくないぞ」

当然、味が、だよな。

「私が仕込んでやろう」

お前はジャーボウに何をさせる気だ。

「中に何か入れられるのは嫌だからな」

そうだよな。料理の場合は大抵、ハーブとか入れられるらしいからな。それを好んで食べる人間は良く分からない。

「そうか、お前は挿入されるのは嫌か」

フェイキアール、お前はちょっと黙ったらどうだ、と言いたくなったが、俺はだんまりを続行していた。ただ、あまりの二人の会話のシンクロ具合に、俺は拍手を送りたくなった。

「当然だ」

だが、さすがにここまで来るとさすがにフェイキアールが可哀想にも思えてくる。ジャーボウの鈍感ぶりはむしろ尊敬に値するほどだ。俺は笑ってしまいそうになるのを必死でこらえた。

「だって、俺にハーブなんぞ詰めたら、お前だって嫌だろう」
「は…?」

ジャーボウがあまりにも真面目な顔で言うものだから、俺はこらえきれなくなって、とうとうふきだした。それと同時に、二人は俺を見る。そしてすぐに、二人で顔を見合わせた。ようやく、会話が成り立っていなかったことに気付いたらしい。

「何の…話だ?」

フェイキアールがいつもより、幾分か低い声で聞いた。ジャーボウは淡々と、俺を喰らう話だろう、と疑いもなく返事をする。全てを分かっている俺は、見つめあったままの二人にニヤニヤしたまま声をかけた。

「俺は最初から知っていたぞ。お前たちの会話が全く噛み合っていなかったということにな。それにしても、いいシンクロ具合だったな」
「そんなことはどうでもいい」

何で気が付いたときに言わなかったのだ、というフェイキアールの言葉に、その方が面白いだろう、と言ってやった。斜め上からの発言をしたつもりだったが、フェイキアールが素直に、そうか、とため息をついて、ホールドした状態のままだったジャーボウから離れて座り込んでしまうものだから、さすがの俺ももう何も言えなくなってしまった。ジャーボウはそんなフェイキアールの心境を知ってか知らずか、珍しくおとなしくしていた。部屋の中に、沈黙という重たい空気が立ち込める。その空気にいち早く耐え切れなくなったのは、当然、俺だ。俺は椅子から腰を浮かして、フェイキアールのそばに行った。

「まぁ。アレだ、フェイキアール。ジャーボウにその手の誘惑をしても無駄だ。例え、お前が絶世の美女で迫ろうと、ジャーボウは何も思わないだろうな」

俺は、そっとフェイキアールに耳打ちした。

「知ってるさ」

フェイキアールは一瞬、遠い目をしてから、ジャーボウを見た。その視線に気付いたらしいジャーボウは、きょとんとしてフェイキアールを見返す。そして、フェイキアールは大きく息を吐いて続けた。

「だからこそ、振り向いて欲しいんだ」

ジャーボウにも聴こえているであろう音量でフェイキアールは言う。俺は本人の目の前で、こんなにも堂々とした告白をしているのを初めて聞いた気がした。

「まるで恋する乙女のようだな」

俺はフェイキアールの頭を二度ほど叩いてから、立ち上がった。ふっと笑みを漏らして、フェイキアールとジャーボウを交互に見る。まぁ、俺は第三者だからな、何も言うことはない。片手を挙げた俺は、部屋の中に花弁を舞わせた。その直後、俺は成分に鈍い痛みを感じた。

「おっと、召喚されるらしい。お先に」

その台詞を最後に、二人の前から姿を消した。さっき散らせた、イキシアの花弁が、俺の掌に一枚乗っていた。



※イキシアの花言葉「秘めた恋」「誇り高い」等



*****

いやもうなんか本当にごめんなさい
フェイキあんなじゃない…下ネタ走ってしまった…
力量不足ですみません
織様!!相互ありがとうございました。遅くなってしまってすみませんでした。これからも、よろしくお願いします。




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -