プトレマイオスが、星を見ながら、紙にペンを走らせる。俺はその姿を見つめていた。
 
「ねぇ、レカイト?」
 
プトレマイオスが紙から視線を上げずに俺を呼ぶ。なんだ、と問うと、プトレマイオスは微笑んだ。
 
「僕がこの世から消えるとき、君はどこに居るのかな。僕以外の誰か別の人に呼び出されていたら嫌だな」
 
笑いながら言ったが、声は笑っていない。プトレマイオスは急に真顔に戻ると、ペンを置いて、真っ直ぐに俺の目を見つめた。その視線の鋭さに、俺は思わず目をそらす。
 
「そんなことを言っても、君は絶対に僕だけのものにはならないし、させられない、したくない。君の素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい。でも、僕は誰かに君が取られてしまうのを嫌だと思ってる」
 
プトレマイオスの声はどんどんと低く沈んでいった。俺がプトレマイオスを見ると、馬鹿みたいだね、と困ったように笑う。俺はため息をついてから、机の上に置かれた、プトレマイオスの手を握り締めた。
 
「まったく、何を言い出すかと思ったら、そんなことか。……残念だが、俺は妖霊だ。俺がこの世界に居るためには、誰かに召喚されなきゃならない。お前さんも分かってはいると思うが、これは仕方の無いことなんだ」
 
俺が静かに言うと、プトレマイオスの顔が泣きそうに歪んだ。
 
「だがな、プトレマイオス。よく、聞いてくれ」
 
俺は反論しかけたプトレマイオスを手で制して続ける。プトレマイオスからは、目をそらさなかった。
 
「今の俺はお前さんのものだ。命令されたら、どんな嫌な事だってしなくちゃならない。それは、お前さんだけでなく、誰に召喚されても同じことだ。だがな、お前は特別だ。この先何千年経とうと、俺はプトレマイオスという人間を忘れない。いや、忘れられない。俺の心はお前のものだ」
 
言い切った俺は、なんだか照れくさくなって、視線をそらした。
 
「ねぇ、レカイト?」
 
何も言わなかったプトレマイオスが口を開いた。さっきよりも明るい声だ。
 
「僕が、この世界から消えても、君の中で僕は生きる。僕はずっとレカイトと一緒だ」
 
プトレマイオスはそう言って、目を伏せる。その表情は、今にも消えてしまいそうな気がして、俺はプトレマイオスを抱き締めた。
 
「俺がお前を永遠に留めておく。だから、そんな顔をするな
 
消えてしまいそうな気がしていたプトレマイオスの鈍い体温を感じて、俺はほっとする。プトレマイオスは、俺より長くは生きられない。それは当然のことだ。だから、俺がプトレマイオスを生かさなきゃならない。
 
「俺がプトレマイオスを生かす」
 
俺の言葉に、プトレマイオスが微笑んだ。プトレマイオスの存在は、俺が忘れさせない。



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