小僧がぶっ倒れた。それで俺の仕事が増えた。熱があるなら仕事くらい休めばいいものを。いや、それ以前に、奴は今まで仕事だなんだと言って、ろくに休んで無かった。ほどよく息抜きもしなくちゃならないってのに。仕事馬鹿にもほどがある。
「ほら、書類だ」
家に帰ってすぐに、俺は小僧の寝室に向かった。俺が茶封筒を手渡すと、赤い顔のままのナサニエルはそれをあけようとする。熱にやられた脳じゃ思考が回らないのか、開けるのにも苦労している。ため息をついた俺は、ナサニエルの手から封筒を奪った。
「何を、する…」
ナサニエルが俺を見上げた。本人は睨んでいるつもりなのだろうが、涙がいっぱいにたまった瞳で見上げられても、なんとも思わない。
「いいから、今日くらい寝てろ」
布団をかけ直してやると、素直にそれに従う。珍しいな、と思うと同時に、それほど疲れているのか、とも思った。少しは自分に優しくなればいいものを…。俺はナサニエルの冷たい手を握りしめる。
「寝るまで側に居てやるから…」
こっくりと深く頷いたナサニエルは目を閉じた。それから少しもたたないうちに、寝息をたて始める。すぐに離れようかと思ったが、しばらくそこに居ることにした。
「少しは、俺も頼れよ」
俺はそっとナサニエルの唇にキスをする。早く治してくれよ…張り合いが、ないからな。
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