俺はがっくりと膝から倒れ込んだ。さすがに辛いものがある。俺は崩れた廃屋の壁に寄りかかった。
「おい、バーティミアス」
俺は声の方を見た。どうせ、傍に居ることは気配でわかっていた。だから、俺は今、こんなにも無防備な状態で伸びている。
「よう、フェイキアール」
「全く、私ではなかったらどうするつもりだ」
ため息をつきながら、フェイキアールは少し離れた俺の隣に腰を下ろした。
「お前だって、最初から分かってなかったら、こんなことしてない」
「当然だ。そんな状態のお前など、一捻りだからな」
うるせぇ、と俺は抱えた膝の上に顔を埋める。成分が冷えきって、体温が下がっている。顔をつけた膝が冷たい。
「こんなんじゃなかったはずなんだがな」
小さく漏らした俺の頭に、熱が乗っかった。俺は顔を上げなかった。見なくても分かる、フェイキアールの手だ。俺はそのままうつむいたままでいた。
「お前のその弱い姿は、誰にも見せるなよ、バーティミアス」
わしゃわしゃとフェイキアールの手が、俺の隣に頭を撫でる。俺は少しだけ顔を上げた。フェイキアールと目が合ったが、すぐにそらされてしまう。俺は思いきってフェイキアールの肩に寄りかかった。
「そんなことくらい、言われなくても分かってるさ。俺がこんなことをするのはフェイキアールだけだからな」
「私以外にしていたら困るがな」
明後日の方向を見たフェイキアールは答える。俺はその答えに満足して、目を瞑った。俺の真の姿を知っているのはお前だけだろう、フェイキアール。この先も、他の誰かに知られることはないだろう。俺の本当の姿を知る権利はお前だけにある。
「お前だけに許す」
俺は目を開いて、フェイキアールの頬に口付けた。驚いたフェイキアールは、すぐに俺の唇を塞ぐ。こんなことをするのもフェイキアールだけ。二人の秘め事は誰も知るはずがない。
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