両方向に手のひらを向けて爆破の魔法、それと同時に右足を蹴り上げて、敵の頭を吹っ飛ばす。付近の敵を片付けた俺は、片手でバク転をした。着地地点で真後ろに迫っていた敵の鳩尾の辺りに、肘鉄をかます。よし。清掃完了だ。

「全く…私の仕事まで取るな」

暴れ足りん、と俺の遠くで同じように敵を片付けていたフェイキアールが言った。

「すまんな。俺は仕事が早いんだ」

おどけて言うと、フェイキアールに苦笑いをされる。

「もう少しおしとやかでも、いいんだがな」
「俺がおしとやかになったら、世界が滅亡するぞ」
「それもそうだが」

フェイキアールはため息をついた。何が言いたいのかわからない俺は、左に首を傾ける。

「意味がわかっていないようだな」

呆れたように笑うフェイキアールはそう言いながら、俺の傍に一歩近づいた。

「ずいぶん昔に、お前の麗しさとこだわりは、どこぞのプリンセスのようだ、という話をした覚えがある」

俺は慌てて記憶を探る。だが、思い当たるところはない。そんな歯の浮くような台詞、忘れようが無い気もするが、俺の中では抹消したいようなものだったのか。

「そのときお前は、そう思うなら、そう思っていろ、と、そう言った」
「俺が?そんなことを?」

それまで何も言わずに聞いていた俺は、とうとう声をあげた。そして、思考をフル回転させる。

「あ、」

思い出した。確か、今と同じような状況のときだった。そのときは、少女の姿に変身していたのだ。

「俺は、そのとき確か…」
「いくらプリンセスとは言え、守られるのは嫌だ、俺が守ってやる。そう言ったんだったな」

顔から火が出そうな勢いで、俺はその場にうずくまった。恥ずかしいったらありゃしない。俺もあの頃は若かった。

「忘れろよ、馬鹿…」
「残念だったな。私の記憶力は良い方なんだ」

ニヤリ、と笑ったフェイキアールは、俺の少し後方に向かって、腕を伸ばす。振り返ると、敵のインプがぺしゃんこになっていた。

「私がお守りして差し上げましょう、プリンセス」

フェイキアールが指を鳴らすと、インプの姿は跡形もなく消えていた。

「俺は、守られなくても大丈夫だっつーの」

俺はむっとして立ち上がる。行くぞ、とフェイキアールに声をかけると、仰せのままに、なんて言って、ふざけたまま付いてきた。

「プリンセスはプリンセスでも、俺は戦うプリンセスだからな」

俺の言葉を聞いたフェイキアールは、一瞬驚いたような表情をしてから、俺の頬にキスをする。…なんだか、また余計なことを言ったような気がする。





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