「苦しい」
ナサニエルは呟いた。
「愛しすぎて、苦しい」
そう言ったナサニエルは力無さげに笑う。そのナサニエルの頬をバーティミアスの手が優しく包み込んだ。ナサニエルはゆっくりと目を伏せる。
「でも、お前を愛するためなら、この苦しみも愛せる。愛している、バーティミアス…」
ナサニエルはバーティミアスの唇に自分の唇を重ねた。一瞬だけ重なった唇が、名残惜し気にもう一度重なる。
「俺は、お前に何も出来ないが、愛だけはやれる。苦しむな。俺もお前を愛してる」
唇を離したバーティミアスが、ナサニエルの頭を撫でながら言った。ナサニエルの瞳が、バーティミアスだけを映す。
「お前さえ居れば、僕はそれ以上、何も望まない」
そう言ったナサニエルは、バーティミアスに身を委ねた。バーティミアスの背中に回したナサニエルの腕に力がこもる。バーティミアスの為なら、苦しみさえも幸せだ。ナサニエルは聴こえることのないバーティミアスの心臓に、耳を押し当てた。
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