その日の俺は何だか可笑しかった。たまたまジャーボウと同じ任務。俺はジャーボウに話しかけた。そもそも、すでにそこから可笑しかったのだ。俺がジャーボウと話すなんて。ジャーボウとちゃんと会話が出来た試しがない。それなのに、俺は口を開いた。

「最近、フェイキアールがやたら俺に突っ掛かってくるんだが」

ジャーボウは何も返事をしない。俺は、ジャーボウの返事が無いことをいいことに、話を続ける。

「会えば殺されかける。俺を見下すような言葉しか吐かない。全く何なんだよ。俺のことをよく思ってないのは分かっているが…あー、俺は何を言ってるんだ」

俺は地面を蹴った。もやもやする。俺がため息をつくと、それまで何も言わなかったジャーボウがじっと俺を見た。

「フェイキアールはお前に好意を抱いてるんじゃないのか?」

何にも考えて居なくて、戦うことしか頭にない単細胞だと思っていたジャーボウが、そう言った。俺は呆けるばかり。そんなこと、考えてもみなかった。正直言うとその考えだけは回避していた。そんなはずはないつもりだった。

「好意を寄せている者に対して、何か気を引くようなことをしたくなる、と昔にある人間が言っていた」

ジャーボウが、さらにそんなことを言い出すものだから、俺はその場にしゃがみこむ。三歩歩けば忘れる、と思っていたジャーボウが、だぞ?俺はそれきり何も言わなかった。成分がぐるぐるする。たぶん、顔を作り出している辺りが熱いから、真っ赤かもしれない。今日の俺は何だか可笑しいのだ。必死にそう言い聞かせる。

「どうした?バーティミアス」

ジャーボウに呼ばれて俺は顔を上げた。複雑な表情をしているであろう俺の顔を見て、ジャーボウは少し笑う。

「何だ、気付いて居なかったのか?」

そうじゃなくて、気付かないフリをしていたんだ。俺は膝小僧に顔を乗せた。今日の俺は可笑しいのだ。俺はため息をついた。




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