ナサニエルがいつの間にか、成長していた。俺が知っているのは、幼くて、井の中の蛙状態の小僧。だが、知識だけは無駄に深くて、米粒程度の良心を持っている、ナサニエル。それが、知らない間に情報大臣なんて身分になって、国のトップを担う一人になっていた。いっちょまえに色気付いてるが、中身は俺と出会ったあの頃と変わらない。

「なぁ、ナサニエル?」
「その名前で呼ぶなって」

ナサニエルはそうは言うが、それ以上は何も言わない。今居るのが自宅の寝室のベッドの上で、絶対に俺と自分以外はその周辺に存在しないと分かっているからだろう。俺は、もそもそと暗闇の中で素肌にYシャツを羽織り出したナサニエルの横に寝そべった。

「俺は、もう俺が分からない」
「何でだ?」
「俺は、人間なんて同じだと思ってた。こんな感情、抱くはずじゃ無かったんだ」

ナサニエルは何も言わずに、俺の頭を撫でる。

「最初は、お前にキスされたんだっけな」
「言うなよ、恥ずかしい」
「顔真っ赤にして、ごめんって言われたよな」

言うなってば、と手で口を塞がれた。どうせナサニエルは暗闇で見えないだろうと思ってるだろうが、俺にはナサニエルの表情がよく見える。顔が真っ赤だ。

「今思えば、あのときの僕は恥ずかしかった。お前しか見えていなかったから」

そう言ったナサニエルは、俺の口を塞いでいた手を離して、今度は俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。照れているのか、ナサニエルは俺を見ない。俺は半身を起こして、ナサニエルの手首を掴んだ。

「何だよ…」
「今も、俺だけしか見えないだろう?」
「当たり前だ、ばか」

掴んだ腕を引き寄せて、俺の上に倒れさせる。今度は俺がナサニエルの髪を撫でた。

「溺れていたのは、俺の方かもしれないな」

ナサニエルの漆黒の瞳が俺だけを映す。ナサニエルにキスをされて謝られた直後に、俺はナサニエルの唇を奪った。それは、ナサニエルと同じ気持ちだったから。

「バーティミアス」
「ん?」
「好きだ」
「あぁ、知ってる」

俺は優しくナサニエルを抱き締めた。身体の温もりも、あのときから、全く変わっていなかった。






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