「久しぶりに、なっちゃったね」
ヒロトは寂しそうに微笑んで言った。ヒロトも、いろいろなところに引っ張り出されて、忙しいのだから仕方ない。
「毎日、お疲れ様です」
ありがと、と言って笑う顔は、何だかやつれたように見える。全く、ヒロトをこんな風にさせるとは、許せない。俺は、そっとヒロトを抱き寄せた。
「貴方は少し頑張りすぎです」
「俺が頑張らなくちゃ、誰も出来ないの」
「なら、俺を頼ってください。俺なら、貴方のサポートを完璧にこなせます」
でも、と開きかけたヒロトの唇に、人差し指を押し当てる。驚いて大きく開かれたヒロトの瞳が、俺だけを映す。
「何年の付き合いだと思っているんですか?貴方を一番傍で見ていたのは、この俺です。俺以上に貴方を知る人間は居ません」
互いが会えない日は増えたが、心だけは変わらない。ヒロトを想わなかった日は一日もない。
「俺の部屋で、一緒に住みませんか?少し広くて困っていたんです」
笑って言ってみせれば、ヒロトの表情が明るくなる。あぁ、あの頃と変わらない。俺がヒロトを好きになったあの頃と…。
「やっぱり、恭馬大好き」
俺の肩に顔を埋めて、ヒロトは言う。その髪に俺はキスを落とした。
「当たり前です。貴方が俺以外の誰かを好きになるなんて、ありえません」
俺がそう言うと、ばか、と小さく呟いたヒロトは、俺の頬にキスをする。驚いた俺の顔を見ると、ヒロトはふわりと微笑んだ。俺はその唇に唇を重ねる。
「さぁ、ヒロト。引っ越しの準備を始めますか?」
「恭馬も手伝ってね」
仕方ないですね、と俺はヒロトの手を取った。その手の甲に口付けて、俺は走り出す。
「行きますよ、お姫様」
いつまでも、変わらないまま、ずっと、永遠に。
×