甘いものはワタシも嫌いではない。けれど、カミュのはやりすぎだと思います。
「……何故、クッキーに砂糖を乗せるのですか?」
「これは乗せているのではない。かけているのだ。見て分からんのか」
カミュはそう言って、こんもりと山になった砂糖ごとクッキーをかじった。あれでは、どんな味がしようと分からない。
「カミュ、」
「何だ?」
「甘すぎるものを食べていると、ミカクがおかしくなる、とトキヤが言っていました。甘いと感じなくなってしまいます。いくら好きでも、ドが過ぎるのは良くないこと。控えたらどうですか?」
ワタシが言うと、カミュは大きなため息をつく。
「俺が好きでやっていることだ。貴様に害が及ばないのだからいいだろう」
「そういう問題ではありません!」
むっとして言っても、カミュは優雅な表情で、砂糖たっぷりのコーヒーに口付けるだけで、全く聞く耳を持たない。ワタシはカミュを心配しているのに。
「何か言いたげだな? 愚民」
「とうぜんですっ!」
ワタシは思い切り眉間にしわを寄せてみる。怖いカオにするために。
「カミュは……ッ!?」
言いかけたところで、唇を塞がれる。驚いて目を開けると、すぐに離されてしまった。さっきの勢いを削がれてしまって、落ち着かなく視線を下の方でさまよわせていると、カミュに下から眉間を弾かれる。
「うみゃっ! 何をするのですか!!」
「アイドルがそんな表情をするな。眉間にしわが付く」
そう言われて、また眉間にしわを寄せてしまうと、もう一度指で弾かれた。
「貴様に心配されずとも、その程度の自己管理は自分でする」
カミュはそれだけ言って、コーヒーをあおる。当然、カミュは全て分かりきった上で行動しているだろう。ワタシが心配するほどのことでもないことも分かっている。
「何を浮かない顔をしている」
ふと声が掛かってカミュを見た。その瞬間に額にキスをされる。
「カ、ミュ……?」
「俺から甘味が消えても、貴様が思い出させてくれる」
すっと目を細めて言われて、顔が熱くなる。頭を撫でて、カミュはキッチンへ引っ込んでしまった。ふわふわとする気持ちは、カミュのコーヒーよりも甘かった。
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