バーティミアスが淹れる紅茶は、世界で一番美味しい。バーティミアスが焼く、スコーンは、どこの一流パティシエが焼くものよりも美味しい。
「バーティミアス。紅茶とスコーン」
「はいはい」
バーティミアスは、すぐに紅茶とスコーンを持って、キッチンから現れた。
「そろそろ、そんな時間だと思った。今日は、レディグレイとチョコチップスコーンだ」
何故、バーティミアスはいつも自分が求める以上のことをしてくれるのか。ナサニエルは、全てを完璧にこなしてしまうバーティミアスに嫉妬をしていた。だが、それ以上にそんなところを愛していた。もちろん、ナサニエルが愛しているのは、そこだけではないが。
「お前のために、スコーンは甘めにしてあるはずだ」
味見は出来ないが、と付け足したバーティミアスに、甘いスコーンを頬張りながらお礼を言った。こういう小さなことはバーティミアスにしか出来ない。それ以前に、ナサニエルが大の甘いもの好きだということは、バーティミアスしか知らない。ナサニエルは、柔らかい香りを漂わせる、レディグレイのはいったティーカップに口付ける。
「やっぱり、美味しい」
「そりゃあ、愛情がこもってるからな」
バーティミアスはそう言って笑った。レディグレイは、甘めのスコーンと飲むのには最適な濃さで、スコーンも普通のものよりもだいぶ甘いが、嫌な甘さではない。むしろ、ナサニエルにはちょうどよかった。
「好きだな…」
ほっと息を吐いて、ナサニエルは呟く。
「スコーンと紅茶が、か?」
バーティミアスがにやりと笑った。ナサニエルは、それに答えるようにバーティミアスを指差した。
「バーティミアスが、だ」
悪戯っぽい笑みを浮かべて、ナサニエルはバーティミアスの頬にキスをする。
「スコーン、いつもより甘かっただろ」
「自分で確かめろ」
「じゃあ、そうする」
そう言って、バーティミアスはナサニエルの唇に噛みつくようにキスをした。
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