「ここでいいよ。ありがとう、レカイト」

プトレマイオスはそう言って笑った。今日は、プトレマイオスの荷物をバルコニーに運ぶだけの簡単な仕事。生ぬるいったらないが、俺としては楽で嬉しい。

「いいのか?」
「うん。ここが一番落ち着くんだ」

さてと、とプトレマイオスは手を叩く。何をするのかと思ったら、文字と図がたくさん書いてある紙と、使い込まれたペンをポケットから出した。

「そろそろ、君に追い付かないといけないね」
「何をするんだ?」
「君について、学ぶのさ」

それから、しばらくプトレマイオスは紙を眺めて、別の紙に何かを書き写したりしていた。プトレマイオスが黙ってしまうので、俺は何もすることが無い。バルコニーをプトレマイオスの警護がてら、ぶらぶらと歩き回る。

「僕らは、君たちを学ばないといけない」

プトレマイオスは呟いた。その顔には笑みが浮かんでいる。

「僕らが君たちを先導し、命令する時代を早く終わらせなくてはならない」

昔の俺なら、なんて夢みたいなことをほざく小僧だ、と思っただろう。だが、今の俺は、プトレマイオスなら夢で終わらないかもしれない、と思ってしまう。俺は、プトレマイオスの横に座った。

「レカイト、もう君は僕に付いてこなくていいよ。僕が、君を追って行くから」

きりっとした有無を言わさぬ顔で微笑まれて、俺は何も言えなくなった。




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