「愛島、」

カミュに呼ばれて、ワタシは慌てて振り返った。

「なん、ですか?」

ワタシがそう答えると、カミュはなにも言わずに、ワタシの隣に座る。ぼーっと見つめていると、カミュの眉間にぎゅうっとシワが寄った。

「貴様、また、一人で泣いていただろう」

その言葉にどきりと心臓が大きく跳ねる。つんと額を小突かれた。

「何度言ったら分かる」

はぁ、とため息をついて、カミュはワタシに背中を向けてしまう。

「俺が貴様の隣に居るのだ。それなのに、何故俺には何も言わんのだ」

無愛想な言い方ではあるが、声から優しさが伝わってきた。ワタシはカミュの背中に身を寄せる。冷たいと思っていたのに、カミュの体温はとても暖かい。

「ごめんなさい。でも、」
「貴様の、でも、は聞かない」
「カミュにまで、悲しい思いはさせたくない」

ワタシが言うと、カミュは振り返った。何かと訪ねる前に、唇が塞がれる。それは、とても甘く優しいキスだった。

「俺を誰だと思っている」
「カミュ、です」
「…貴様に、愛を教える者、だ」

カミュはそう言って、ワタシを抱き締める。

「貴様だけが、泣くのは間違っているだろう」
「でも、」
「泣くな、愛島。…いや、泣いてもいい。だが、笑顔を忘れるな。笑っていろ」

はい、とワタシは答えた。抱き締めるカミュの腕が苦しい。それでも、ワタシはそれから逃れようとしなかった。そうではなく、出来なかった。

「お前が笑っていられるなら、俺が貴様の悲しみを全てもらおう」

カミュはそう言って、ワタシにキスをする。離されてから、すぐにまた口付けられた。甘い甘い口付けは何度も繰り返される。涙も悲しみも、全て消し去るように。


甘いくちづけをもう一度




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