猫を見ると、バーティミアスを思い出す。しかし、どの猫を見ても、目に光がないし、毛艶も悪い。バーティミアスはそういうところにこだわっているらしく、変身する猫の瞳は爛々と輝き、毛艶もとても美しい。
「お前は美しくないな」
黒猫を見つけて、しゃがんで声をかけてしまった。毛並みは美しいが、瞳に光が全くない。それだけで、毛並みの美しさが半減してしまう。
「なに猫を口説いてるんだ」
上から声がかかって、慌てて振り返った。微妙な表情を浮かべた、褐色の青年と目が合う。
「…バーティミアス」
「とうとう気でも狂ったか」
うるさい、とナサニエルが返すと、バーティミアスは少し笑ってから、ナサニエルの隣にしゃがんだ。
「俺の方がよっぽど美しい猫になるぞ」
バーティミアスはそう言って、猫を一撫でする。
「当然だろう。瞳が違う」
「よく、わかってるな」
「何年の付き合いだと思っている」
ナサニエルは猫を見ながら答えた。この長い付き合いは、自分がバーティミアスから離れられないから続いている。ナサニエルはバーティミアスの頬にキスをした。
「何だよ」
「何でもない。…帰るぞ」
ナサニエルが立ち上がると、バーティミアスもそれに続く。一匹の黒猫が、その二人の後ろ姿を見送っていた。
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下のと対になってる
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