猫を見ると、バーティミアスを思い出す。しかし、どの猫を見ても、目に光がないし、毛艶も悪い。バーティミアスはそういうところにこだわっているらしく、変身する猫の瞳は爛々と輝き、毛艶もとても美しい。

「お前は美しくないな」

黒猫を見つけて、しゃがんで声をかけてしまった。毛並みは美しいが、瞳に光が全くない。それだけで、毛並みの美しさが半減してしまう。

「なに猫を口説いてるんだ」

上から声がかかって、慌てて振り返った。微妙な表情を浮かべた、褐色の青年と目が合う。

「…バーティミアス」
「とうとう気でも狂ったか」

うるさい、とナサニエルが返すと、バーティミアスは少し笑ってから、ナサニエルの隣にしゃがんだ。

「俺の方がよっぽど美しい猫になるぞ」

バーティミアスはそう言って、猫を一撫でする。

「当然だろう。瞳が違う」
「よく、わかってるな」
「何年の付き合いだと思っている」

ナサニエルは猫を見ながら答えた。この長い付き合いは、自分がバーティミアスから離れられないから続いている。ナサニエルはバーティミアスの頬にキスをした。

「何だよ」
「何でもない。…帰るぞ」

ナサニエルが立ち上がると、バーティミアスもそれに続く。一匹の黒猫が、その二人の後ろ姿を見送っていた。


*****

下のと対になってる


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -